小さな散歩道

王子神社、福泉寺と尾根歩き

 
(左)王子神社  (右)王子神社社殿


「子宝の狛犬」と言われている優しい顔の狛犬

ぴんころ祈祷の「ポックリ大師」

尾根道

長閑な田園風景

 つくし野駅から長津田方面へ坂を下っていく。左手の森からウグイスの鳴声が盛んに聞こえ、右手は町並みを見下ろせ、遠くに高圧線が並んで立っているのも見える。車で通るだけでは、なかなか気が付かない風景だ。
  森村学園の門の前を過ぎ、竹林の先を鋭角に右に曲がり旧大山街道の古道を歩く。急な坂を下っていくと信号に出るので、南長津田団地を右に見ながら道なりに進んでいく。左手駐車場の間から見える小高い森が、これから向かう王子神社の一角のようだ。

 ほどなく国道246号線の宮ノ前の交差点。歩道橋の手前を左に曲がると王子神社だ。鳥居の前には1本の大きなモミの木が立っている。横浜市の名木古木指定との札があり、太い幹には注連縄が張ってある。鳥居の前に立って見上げると、急な石段の先に二の鳥居も見える。
  一礼して一気に石段をあがると、正面に山を背にした立派な社殿が見えた。太い注連縄と緑色の屋根がとてもきれいだ。案内によると、創建は慶長元年(1596年)、現在の社殿は昭和61年に再建されたとのこと。
  社殿の前に座っている一対の古い狛犬は、よく見ると左右ともに足元に子どもがいる珍しい狛犬だ。参拝を済ませ、次はここから数分のところにある王子神社の別当寺として開基したと伝えられている福泉寺に向かう。


福泉寺本堂

  246号線の歩道橋を渡ると右側が福泉寺の入口だ。参道の両脇には、「ぼけ封じ観世音菩薩」「ぴんころ祈祷ポックリ大師」「七福神」などが描かれた赤い旗がたくさんが立っている。
  参道を上っていくと、すぐに明るい境内に出る。薬師如来を本尊とする白いきれいな本堂は、昭和45年に再建されたとのこと。さほど広くはない境内に、たくさんの仏像や神様などが建立されているが、きれいに整備されていて、時折聞こえるししおどしの音が心地よく、ひとつひとつ見て回ると面白い。接待所で休憩できるとのことだったが、人の気配がなく、トイレだけ借りて、そのまま天王社のある尾根の散策に出る。

  福泉寺動物霊園の方へ坂を上っていく。振り返ると、王子神社や森村学園、南長津田団地、はるか遠くのビル群までよく見える。坂を上りきると落ち葉がいっぱいの土の道になり、林の中を歩いていく。尾根歩きの雰囲気になってきた。国道を走る車の音は聞こえてはくるが、風が揺らす木々の音がとてもいい。

  2本目の鉄塔を過ぎ、少し視界が開けたところの分かれ道を左の狭い道の方へ進むと、まもなく小さな建物が見えてくる。疫病排除の神とされている天王社がひっそりとあった。静かな小高い丘の上、木々に囲まれた小さな広場にある簡素な天王社を前にすると、一瞬ここがどこなのかわからなくなるような感覚になった。天王社の鳥居は、石塔の間の急な階段を下りた「天王様下バス停」付近にあるが、足元があまり良くなさそうなので、下りるのはやめて、そのまま尾根道を進むことにした。
(左)天王社

  鳥のさえずりを聞きながら進むと、空が少し広くなり、左手には谷戸の家々が見え、いつの間にか舗装路となる。尾根道もそろそろ終わり。突き当りを右に曲がると右手に畑が広がっている。黄色や紫、ピンクに白、草も木も色とりどりの花を咲かせていてとてもきれいだ。明るく長閑な田園風景の中に、先ほど見た鉄塔もあり、ぐるりと歩いてきた道のりがわかり楽しい。このまま246号線に出て、長津田の信号を渡る。大山街道を歩き、住宅地を通り、最後は75段の石段を上ってつくし野駅へと戻った。

  新型コロナウィルス感染防止のため、日々の生活で注意すべきことはあるが、春本番のこの時期、外出できるときには、元気をもらいにゆっくり歩いてみてはいかがだろう。
 
※王子神社/長津田十景の王子秋月
 天王社(牛頭天皇宮)/長津田十景の天王鶯林(てんのうおうりん)

   長津田十景(緑区長津田歴史探訪マップHP参照)

今回の行程 合計約3.5km 徒歩約2時間/目安

つくし野駅―1.2km−王子神社―200m−福泉寺―500m−天王社―500m−長津田信号―1.1km−つくし野駅 

■王子神社
所在地/横浜市緑区長津田7-5-34 地図
電話/045-984-6560
駐車場/あり

■福泉寺
所在地/横浜市緑区長津田町3113 地図
電話/045-981-2635
駐車場/あり

(2020年4月掲載)


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