小さな散歩道

六社宮(八王子市長沼町590)


毬を抱えた吽形狛犬

子どもにしっぽを噛まれてあごが外れたと
言われる阿形狛犬

阿形狛犬の顔の部分のアップ
(外れた下あごと首を金具でつないでいる)

 長沼駅で下車し、正面に広がる多摩丘陵の緑を眺めながら南へ進む。北野街道を渡り、のどかな水路沿いの道を進んでいくと、右手には小さなお地蔵様の姿があった。水路が二手に分かれるポイントを右に曲がると、丘陵のふもとに鎮座する六社宮に着いた。


二の鳥居

 六社宮は明治11(1879)年、長沼村内に鎮座していた八剣社、熊野社、日枝社、八坂社、東照宮、五龍社の六社をを合祀してできた。地元の人たちからは親しみを込めて「六社さま」 と呼ばれており、地域のお祭りなどもこの境内で行なわれている。

 一の鳥居手前には水路があり、この神社は丘陵から流れてきた水路に囲われたような格好になっている。橋を渡って境内に入り、階段を上ると、二の鳥居の両脇には古びた狛犬が構えていた。
  左手の阿形狛犬はアゴにひびが入っており、金属で補修されている。少々痛々しい姿であるが、これには「じゃれていた子犬が親の尻尾を噛み、噛まれた母親があまりの痛さに悲鳴を上げ、その時大きく口を開けすぎてアゴが外れてしまった」という言い伝えがあるという。なんだか微笑ましい言い伝えだ。


六社宮

 境内右手には神楽殿、左手には長沼町会館が建っている。境内奥には緑の中に社殿が構えられていて、その傍らには竹林が茂っていた。境内はよく整備されていて、樹木も高く伸びている。自然豊かな場所に建つ素朴な神社だが、なかなか気持ちのいい一画となっていた。

 神社裏手の丘陵一帯は、都立長沼公園。近隣の人が「公園の中はかなり涼しいよ」と言っていたが、園内に足を踏み入れてみると、本当にヒンヤリと涼しい。傍らではきれいな沢の流れがあり、耳を澄ますと緑の中から聴き慣れない野鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。駅からのアクセスもよく、手軽に森林浴が楽しめるスポットだ。

 天候がよければ、頂上部から奥多摩や秩父の山々が見渡せるという。
  お参りついでに園内を散策してみるのもいいだろう。

(2024年8月掲載)  地図


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