小さな散歩道

奥沢駅前ふんすい広場(世田谷区奥沢3-47-17)


ふんすい広場の説明版

ふんすい広場によく似合う洋風商業ビル
サンケイプラザ

自由道路に面していた目蒲線奥沢駅旧駅舎
(昭和36年撮影。奥沢地誌保存会・染野さん提供)

奥澤神社


ふんすい広場から奥沢駅を写す

  目黒線奥沢駅日吉方面改札口を出ると、四角い池から湧き上がる噴水が迎えてくれる。周囲を高木のケヤキが囲み、ベンチでは本を読む人、一休みする小さい子を連れたヤングママ、店舗の外の椅子でかき氷を食べる人などいて区民の憩いの場になっている。
  この噴水は、母という字をイメージして作られたという話もあるらしい。よく見ると四角の噴水の真ん中には横に仕切があり、それぞれ水が吹き出ている。いわゆる「チョン、チョン」の部分が、噴水と見れば見える。

  奥沢駅の創業は1923(大正12)年3月。1935(昭和10)年頃、自由通りに面したところに北口が新設され、その後、数回に渡って改築された。「当時の中心は北口だから、今のふんすい広場のところは、昔は商店がびっしり並んでいた」と駅近くに住むおじいちゃんが教えてくれた。1974(昭和49)年に駅は総合ビルとして改築され、併せて噴水のある駅前広場も整備された。

  世田谷区内の私鉄線路駅で、駅前に噴水があるのは珍しく、1984(昭和59)年、「せたがや百景100」に選定された。1992(平成4)年には公募により「ふんすい広場」と命名され、駅を利用する人や地域住民に親しまれている。

  ふんすい広場がいちばん賑わうのが、駅から2分のところにある奥澤神社の秋祭りだ。毎年9月第2土・日に行われる。今年は9月9日昼ごろ行われる宵宮祭で、藁で作った大蛇が町内会を練り歩く大蛇お練り行事(世田谷区指定無形民俗文化財)が行われる。江戸時代に当地で疫病がはやったとき、村の名主の夢に、藁で作った大蛇を担いで村内を回るよう告知があり、従うと疫病が治まったことに由来するそうだ。
  江戸時代のことがこの令和の時代まで残っているとは貴重な文化だ。1日目の夕方と2日目は神輿が奥沢の町中を巡行、15時頃に駅前広場に集まった6基が奥澤神社まで宮入する。

(2023年8月掲載)  地図


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