小さな散歩道

孤独なライオン (世田谷区野毛2丁目)


中央は多摩川大橋(第三京浜)
画像左に目印の「送電注意」の看板が

多摩川から写す。
ライオンの頭上を送電線が走っている

東から写す。
多摩大橋の奥に二子玉川のビル群が見える

遊具があったであろう位置のイラスト
( デイリーポータルZを参考にしました)

  多摩川の河川敷に、ぽつんとひとつライオンの遊具があるという話を聞いて出かけた。

  東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から多摩堤通りを下流に向かって歩く。多摩川を右に見ながら多摩川橋(第三京浜道路)をくぐり、川沿いの砂利道(遊歩道)に下りて、さらに進むと右に「電線注意」という四角い大きな看板があり、その先の河川敷の草むらの中に薄赤茶色い丸いものがみえた。こちらを見て、しゃがんでいるたてがみのライオンくんだ。


少なくとも40年以上前にここにあった公園「多摩川遊園」の遊具
「孤独なライオン」

 川を背にして、両手を前に出し横すわりして、パッチリと開いたつぶらな瞳で通行人を見ている。その姿は、どこか寂しそう。周りは草が伸びているが、ライオンの座っているところは少し窪地になっていて土が露出している。この日はかんかん照りの日曜日。たてがみが暑そうだ。雨が降ったら座っているところは水たまりになり、かわいそう。頭上は送電線が張られ、遠くには武蔵小杉のタワーマンション群が見える。

  ネットでこの取り残されたライオンのことを調べてみたら、「孤独なライオン」「埋まったライオン」と呼び、地域の人々が画像を含めた情報をアップしていた。

  その中でインターネットコンテンツ「デイリーポータルZ」が長くこのライオンの遊具を追っていたことが分かった。そのデイリーポータルZによると、かつてライオンやその下流の河川敷にある野球グランドを含む河川敷一帯が「多摩川遊園」という巨大な公園だったということがわかった。また、同遊園でライオンやパンダ、黒いラクダ、丸太のような遊具に子どもが乗っている画像が読者から提供され、撮影の日付けから1984、85年には存在していたことが分かった。

  40年前のライオンくんのたてがみは今より黒く、2本の牙もクッキリ見える。その後、2007年9月、巨大な台風(9号)が同遊園を襲い、ライオン以外の遊具は流されたようで、航空写真から消えた。2019年の台風19号で川が氾濫したときにライオンが埋まったが、誰かが周りの土をどけたのだろう。

  デイリーポータルZは本年1月、同遊園を管理している玉川公園管理事務所が遊具があった場所の掘り起こしをし、砂場のコンクリートの枠の残骸が出てきたと報告している。

  帰りは多摩川大橋ふもとにあるバス停「野毛桜堤」から乗車して二子玉川駅へ。

(2023年7月掲載)


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