小さな散歩道

宇佐神社 (世田谷区尾山台2-11-3)

 尾山台駅から賑やかな駅前商店街を抜けて、環八通りへ出る。環八通りを東へ進み、「尾山台1丁目」の信号を右折。この道をしばらく進むと、下り坂の手前に「寮の坂」と書かれた柱が立っていた。
  傍らの説明版によると、この坂下にある古刹・伝乗寺は、かつては坂の東側の台地にあり、そこには本堂と並んで僧侶の学寮が建てられていたそうだ。 そのため、この坂は「寮の坂」と呼ばれるようになったのだとか。ひとつの坂道にも、なかなか面白いいわれがあるものだ。


宇佐神社の鳥居

本殿

伝乗寺の五重塔

  「寮の坂」を下っていくと、宇佐神社の鳥居が見えてきた。宇佐神社の創建は康平5(1063)年と伝えられている。 永承6(1051)年、奥州平定に向かう源頼義がここ尾山に陣を張り勝利を誓ったという。その後、康平5(1063)年に奥州安倍氏を平定。 この地に八幡社を建て、神様に勝利を報告したのが当社の起源とされている。また、境内には5世紀頃の古墳「八幡塚古墳」があることでも知られている。


階段を上った高台にある拝殿

  鳥居をくぐり石段を上ると、広々とした境内の奥に宇佐神社の拝殿が鎮座していた。古めかしい拝殿の背後は木々が茂る小高い丘になっており立ち入ることはできないが、「八幡塚古墳」もこの丘の上にあるのだそうだ。 周囲には真新しい住宅が立ち並んでいる地域だが、境内で深い緑を眺めていると、ここだけは時が止まっているようにも感じられる。

  また、この神社は通常は一体となっている拝殿と本殿が分かれている。拝殿の奥に進んでいくと、背後の丘の上に小さな本殿がひっそりと構えられていた。 緑に包まれた本殿の姿は下から仰ぎ見ることしかできないが、なかなか珍しい構造の神社といえるだろう。

  参道左手には神楽殿、右手には手水舎があり、その傍らではモミジの木が伸びていた。高台にある境内は南側の視界が開けており、見渡すと多摩川対岸の高層マンション群も目に入ってくる。 境内一帯はきれいに整備されていて、心の安らぐスポットとなっていた。

  宇佐神社の向かいには、「寮の坂」の由来となった伝乗寺がある。五重塔が建つ境内は、手入れのされた庭園風の一角になっている。こちらにも寄っていきたい。

(2022年9月掲載)  地図


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