小さな散歩道

神明坂(大田区石川町1丁目)


石川神社への階段

のぼりに従って右折

神明坂の道標

 東急大井町線の大岡山駅を出て、東京工業大学(略して東工大)と線路の間に伸びる道を西に進む。東工大グラウンドの角を左折すると、川の手前にベンチや花壇が設置された小さな休憩スポットがあった。傍らには「呑川緑道」と書かれた案内板があり、呑川(のみかわ)はここから開渠となって東京湾に注ぐ。呑川沿いを進み、境橋のポイントで左手に入り、住宅街を進んでいくと、正面に崖を上る階段が伸びていた。近隣の人以外は気がつかないような小さな階段だ。


(左)左の崖の上には東工大の校舎が見える (右)神社の裏手

  石垣と建物に挟まれた階段を上ると、眼下には住宅街が広がった。天候がよければここから富士山を望むこともできるようだ。この辺りで道は二手に分かれていて、右手には「石川神社」と書かれたのぼり旗が掲げられている。この崖とフェンスに囲まれた狭い細道を進むと、石川神社の裏手に出た。

 

 

 

 


(左)石川神社

  石川神社は正保年間(1645−1648年)の創建と伝えられており、旧石川村の鎮守であったという。崖の中腹に鎮座する小さな神社であるが、かつては品川辺りにまで崇敬者が多くいたそうだ。境内ではイチョウやマツの木が高く伸び、周囲にも緑が多く残されている。この一帯は住宅が立ち並ぶが、この一角だけかつての姿をとどめているように感じられた。
  社殿は境内の一段高い場所に構えられている。古めかしい社殿の左手には、「稲荷大明神」と書かれたのぼり旗が並び、その先には境内社の稲荷社がある。この稲荷社の足下では、厳しい表情をした小さな狐の像がちょこんと座っていた。なお、近隣では新年に向けた神社のポスターが多く掲げられており、小さな神社だが、地域の人々には親しまれている神社であることがうかがわれた。

  正面の参道から神社を出ると、東工大キャンパスの南側に伸びる坂道に出た。どうやらこの坂が神明坂のようだ。坂の下に向かうと標識があり、「昔、坂のそばに、村の鎮守の神明社があったので、神明坂というようになったと伝えられている。神明社は、現在の石川神社である」と書かれていた。石川神社は、元々は神明社だったようだ。緩やかな坂道を上っていくと、崖上に位置する東工大キャンパスが見えてきた。学生がせわしなく出入りする入口近くでは、イチョウがきれいに色づいていた。

(2022年1月掲載)  地図


小さな散歩道 目次へ 前へ  次へ