小さな散歩道

馬坂と急坂 (大田区田園調布5丁目)

 田園調布に多い坂の中から勾配20パーセント以上という馬坂と急坂をご紹介。

 東急電鉄田園調布駅から徒歩約15分。馬坂(田園調布五丁目30番)と呼ばれる坂道を下りる。途中にカーブもあり、坂全体は見通せないが、高級住宅が多く見晴らしがよく気持ちがいい環境だ。
 大正頃まで、竹やぶの中の坂道だったようだ。その坂を馬が引く荷車で台地へ上ることができる唯一の坂道だったため、馬坂と名がついたそうだ。照善寺脇の坂道なので、「寺の坂」とも呼ばれている。

(右) 馬坂

(左)崖線下を流れる丸子川

(右)田園調布八坂神社

  坂を下り切って崖下を流れる丸子川を渡り川沿いを西へ。田園調布八幡神社の先の道を右折。
  ここが「急坂」(田園調布五丁目26番と27番の間)の上り口。上りはなかなかきつい。ちょうど田園調布小学校の下校時間だった。友だち同士、元気に話しながら下りていく生徒さんと行きかう。

 

 
(左)急坂・下から  (右)上り切ったところで多摩川方面を見る

  上り切ったところで後ろを振り向くと、崖下から多摩川まで続く街並みが見渡せた。「早朝だったら富士山が見えたよ」と土木工事の警備員さんが教えてくれた。「ここにお住いの方々は、この急な坂は大変ですね」と、つい言ってしまった。「健康的でいいんじゃない。実は斜めに下りる少し緩い道もあるんだよ」と教えてくれた。
  この坂の上の台地は立川市から大田区まで約30kmも連続する国分寺崖線で、武蔵野を代表する地形だ。段丘の高さは10mから20mもある。

  田園調布の台地の分譲は大正時代に始まった。大正12年に関東大震災が発生したとき、ここの田園調布の台地に建てた家屋の被害が極めて少なかったのが評判になり、政財界人の別荘が建設されるようになったそうだ。今でも瀟洒な住宅が並ぶ。

(2021年11月掲載)  地図


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