小さな散歩道

「西守稲荷神社」(大田区田園調布1-26)


(上) 閑静な住宅街にある、こじんまりした西守稲荷神社
(右) 社殿 両側のお狐様の像は、新しかった


富士見坂の途中、マンション外壁の
歩道側にある「扇塚」の石碑

水盤は創建当時の「大正十四年」の文字が読めた

社殿の彫刻

 東急東横線・目黒線の多摩川駅、または東急池上線雪が谷大塚駅から徒歩圏内にある「西守稲荷神社」。今回は多摩川駅から7〜8分の道程を歩いてみた。

  駅を出て、浅間神社方面へ、神社参道入口前の踏み切りを渡り、富士見坂を上る。この坂道は、大正末期ごろから行われた耕地整理でできた道で、その名の通り富士山がよく見えるのでこの名前が付いたと言われている。

  上り坂の途中、右手のマンションの外壁に沿って、歩道側に「扇塚」と「拍子木塚」の2基の石碑がある。今となってはその形跡は見えないが、実はこの場所に都内最古の古墳があったことが、1996(平成8)年、マンション建設に伴う発掘調査で判明した。調査では3基の埋葬施設が確認され、3基とも木棺が納められていて、そのうちの1基からは鉄剣、鉄の鏃(やじり)、ガラス小玉、内行花文鏡、土師器などが出土している。出土品などから4世紀前半の築造と考えられるそうだ。「扇塚」の名前の由来は、かつて墳丘上に建てられていた稲荷祠に扇を収めたことによるらしい。

  富士見坂を上った左手に、富士見会館がある。会館前の交差点を渡り、閑静な住宅街を200メートルほど直進した左手が「西守稲荷神社」だ。周囲の立派な邸宅に囲まれた、家1軒分ぐらいの敷地にある、かわいらしい神社だ。


神社の境内には、滑り台も。参道の両側には大きな銀杏の木

  西守稲荷神社の創建は定かではないが、1925(大正14)年2月に現在の場所に祭祀され、1929(昭和4)年に現在の京都伏見稲荷大社より神璽(みたま)を正式に勧請した。
  大正期頃、当地域(現在の田園調布1丁目、清交会の辺りの地域)は、西山谷という集落で、家が20数軒点在しており、その西山谷地域の中央に祀られて西山谷集落を守る稲荷神社という意味で「西守稲荷神社」と言われるようになった。以前は、西守稲荷講が地域住民で組織され神社の祭祀が行われていたが、今は同講は解散している。

  こじんまりした神社だが、境内はきれいに整備されている。滑り台が1台、鳥居をくぐった右手にある。人が少ないので、小さな子どもも安心して遊べそうだ。参道の両側に2本、大きな銀杏の木があり、秋には黄葉狩りが楽しめるだろう。
  鳥居や境内の水盤には、創建当時の「大正十四年」の文字が刻まれていた。参道の敷石も当時からのものだとか。鳥居や水盤と違い、近年になって置かれたと思われる、巻物と宝珠をくわえた“お狐さま”が社殿の両側に鎮座していた。

(2020年2月掲載)  地図


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