小さな散歩道

六郷神社 (大田区仲六郷3-10-18)


神社南側の鳥居と太鼓橋(神橋)
鳥居の奥に切妻造の神門が見える

源頼朝の寄造と伝わる手水石がある

旧六郷橋の親柱


六郷一円の総鎮守、六郷神社の境内

 六郷神社は京急線「六郷土手」駅から10分ほど、国道15号線(第一京浜)に面してある。神社へ入る道は二通り。国道から参道を通って境内に入る道と、寶珠院(御幡山建長寺)の前の陸橋を渡り、国道を挟んで同院とは反対側の住宅地の路地から入る道とがある。歩きやすい住宅地の道の方を2ブロックほど進むと、左手に大きな鳥居が見えてきた。

  鳥居の前には石造の太鼓橋(神橋)があり、その周りでは子どもたちが遊んでいた。この太鼓橋は1191(建久2)年、源頼朝の寵臣として権威を振るった武将・梶原景時(かげとき)が寄進したものといわれている。

  六郷神社の歴史は古く、1057(天喜5)年、源頼義、義家の父子がこの地の岩清水八幡に武運長久を祈ったところ、前九年の役に勝利をおさめたので、凱旋後その分霊を勧請したのが創建と伝えられている。1189(文治5)年、源頼朝も戦勝祈願し、1191(建久2)年に社殿を造営した。国道側から参道を通って境内に入った左手に、これも源頼朝の寄造と伝わる手水石がある。

↑ 阿吽両方そろう、
大田区内最古の貴重な狛犬

← タレ目の狛犬の顔


  境内には、他にも神社の歴史を物語る石碑や遺構がいくつもある。源頼朝寄造の手水石の隣に、大田区文化財に指定されている区内最古の狛犬が一対ある。これは1685(貞享2)年に六郷中町の有志が願主になり奉納されたもの。江戸中期(18世紀)以降、造立願意は「現世利益」とするものが多くなるが、この狛犬は「二世安楽」を祈った中世的なものだ。造立年代が古いにもかかわらず、阿吽両方がそろっているのもポイント。造形的にも独創的なもので「素朴かつユーモラスな芸術性に富んでいる」と、大田区教育委員会の説明板にもあった。確かに、ちょっとタレ目で愛嬌のある顔立ちだ。

  神社のあるこの六郷地域は、昔は東海道における江戸の出入口で、多摩川を渡る「六郷の渡し」もあり、活気ある有名な場所だった。六郷神社の境内には、明治期になって架けられた旧六郷木橋の遺構である「親柱」が、切妻屋根を付して保存されている。

  今、神社の敷地内には六郷幼稚園があり、通園時間は園児たちの送り迎えで賑わう。休日には、同園卒園生たちかまたは近所の子どもたちか、元気に遊んでいる。昔も今も、六郷神社は地域の人たちに親しまれている。

(2018年12月掲載)  地図


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