小さな散歩道

六郷用水 (沼部駅〜丸子橋 大田区田園調布本町)


(左) 東光院横にある「六郷用水の跡の石碑」がある広場
藤棚や用水の説明板もあり、休憩スポットには最適
(右)  亀や小さな魚もたくさんいる、澄んだ水が流れる用水路
その脇を桜並木の遊歩道が続く

 狛江市から世田谷区を通り大田区に至る六郷用水。江戸幕府が成立する以前の1597年(慶長2年)、徳川家康の命により水田灌漑用に開削が始まり、14年の歳月をかけて完成した。全長約30キロメートル、感慨面積は1,500ヘクタールに及び、六郷領と世田谷領の一部を合わせた50ほどの村々がその恩恵を受けたそうだ。
  現在、大田区内では中原街道から東の東急多摩川線の多摩川駅から鵜の木駅付近に、湧水を使った用水路が再現されていて、散策にちょうどよい遊歩道になっている。今回は、東急多摩川線の沼部駅から多摩川駅方面、丸子橋までの500メートルほどを歩いてみた。

 
(左) 広場脇にある復元された「ジャバラ」  (右) 途中にある「東京の名湧水57選」 湧水が流れ落ちる水音が涼しげ


遊歩道のマンホールにも「ジャバラ」の絵が

  駅を出て、多摩川駅側の道路を右折、100メートルほど先に真言宗の寺院・東光院がある。東光院の手前に「六郷用水の跡の石碑」があり、その一角が広場になっている。六郷用水の説明板や、藤棚の下にはベンチがあり、涼しい木陰でちょっと一息できる。

 広場近くの用水の中に、小さな水車「ジャバラ」が復元されている。「ジャバラ」は、足踏み水車、または踏み車ともいう揚水(ようすい)用水車で、かつて六郷用水流域の水田では早春や旱魃で水が少なくなった時、羽根を踏んで回転させ、田んぼに水を入れていたそうだ。
  この「ジャバラ」は六郷用水地域の風物詩なのか、遊歩道のマンホールにも「ジャバラ」の絵が描かれていた。


用水路には立派な鯉が悠々と泳いでいる

 遊歩道に続く用水路では、亀や鯉が気持ちよさそうに泳いでいた。鯉は、由緒ある日本庭園の池にいるような、丸々と太って体長60センチはゆうに超えそうな、とても立派な錦鯉が何匹もいた。足音を感じるのか、用水路に近づくとスーッと寄ってくる。

  遊歩道の途中には「東京の名湧水57選」の箇所もあり、そこからも新鮮な水が用水に流れている。都会の中に復元された用水路とは思えない、きれいな水が流れている。その中で悠々と泳ぐ立派な鯉を眺めていると、見ているこちらまで澄んだ気持ちになる。

(2018年8月掲載)


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