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(左) 玄関脇の洋間は書斎でもあり、来客用の応接間でもあった
(右)
築70年近い昭和の住宅がまるごと博物館に
東急多摩川線下丸子駅から8分、環八通りを渡り、藤森稲荷横のぬめり坂を上がり、庚申塚の左の道を進むと左手に鵜の木いまいずみ保育園が見えてくる。
この保育園の反対側にある脇道を入った先に「昭和のくらし博物館」はある。
東急池上線久が原駅からも8分で到着する。駅前商店街の久が原栄会通りを南へ、大田区立東調布第三小学校横を通り、そのまま直進すると右手に同博物館への入口がある。
小さな入口なので見落としそうだが、門の先に続く飛び石の路地は昔懐かしい住宅街のアプローチを思わせる。
建物は1951年(昭和26年)、政府の住宅金融公庫の融資を受けて立てた、公庫住宅としては最も初期のもの。 同館館長の小泉和子さん(日本の家具史・生活史研究家)の両親と、和子さんたち娘4人の一家が住んでいた家を、そのまま保存・展示している。 来年の開館20周年を控え、今年NPOを立ち上げた。
同館学芸員の小林こずえさんが、玄関脇の一室だけある洋間の書斎で出迎えてくれた。 館内はまるごと昭和の世界。当時の食事を再現した卓袱台や今でもすぐ使えそうな台所、学習ノートやおもちゃを展示する子供部屋など、 同時代を知る人には懐かしい、昭和の時代を知らない平成世代には、レトロ感一杯の博物館だ。
卓袱台には3度の食事とおやつを再現、小さなおかず用のお弁当箱も
今、2階の子供部屋では第14回企画展「楽しき哀しき昭和の子ども」が開かれている。(2019年3月31日まで)
ままごとセットや人形、駄菓子やお子様ランチ(模型)など、子どもが大好きだったものの展示は、見ているだけで大人でも楽しい気持ちになれる。
一方、戦争に明け暮れた昭和前期は、社会的弱者でもある子どもたちの受難の時代でもあった。
戦争中の学童疎開や戦争孤児、また社会的背景にある貧困問題など、決して幸せな子どもたちだけではなかった。その両面を知ることができる貴重な企画展だ。
「実は外国の方にも人気なんですよ」と同館スタッフの鈴木康史さん。日本が、近代国家になり、庶民の生活がどのように欧米化していったか? 中には江戸時代から一気に西洋化したと思っている人もいるそうで、子供服の展示でも、家では和服で晴れ着が洋装といった和洋折衷の展示を見て、 初めて近代日本の欧米化の過程を理解してもらえるという。
同館の隣には3年前にできた「画家吉井忠の部屋」がある。小泉館長が美大の学生時代に師事した洋画家の作品を展示している。(入館料別、400円)
■登録有形文化財「昭和のくらし博物館」 ホームページ
住所/大田区南久が原2-26-19 TEL:03-3750-1808
開館/金・土・日・祝日の10:00〜17:00 (展示替えによる臨時休館あり)
入館料/大人500円、小中高校生300円
(2018年7月掲載) 地図
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