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(左) 梅園入口 (右) 珍しい品種には、その名称の短冊が付けられている
都営地下鉄浅草線の終点、西馬込駅から国道第二京浜を南西へ直進、約10分ほど歩くと「池上梅園」に着く。
同園を訪れた2月最後の週末は、梅も6分咲きとかで、園内はとても賑わっていた。入口脇にある自転車駐輪場は、臨時スペースも含めほぼ満車、最寄り駅からも梅見客とおぼしき家族連れやカップル、外国人観光客も歩いていた。
満開の白梅
日蓮上人入滅の霊場として有名な池上本門寺の西側にある同園は、大田区が管理・運営している。入口で入園料100円(子どもは20円、65歳以上の人や身体障害者手帳所有者などは無料)を払って園内へ。
白梅150本、紅梅220本、約30種の梅が咲き誇る景観や、しだれ梅や、同じ木に紅白の花を咲き分ける“思いのまま”など珍しい品種の梅をカメラに収めようと、多くの人たちがあちこちでカメラやスマートフォンを構えていた。数羽のメジロが枝を飛び回り、満開の白梅をつついていた所では“撮影渋滞”が発生していた。
池上梅園は、丘陵斜面を利用した庭園で、戦前まで北半分は日本画家の伊東深水氏の自宅兼アトリエだったが戦災で焼失した。戦後、築地の料亭経営者の小倉氏が南半分を拡張し、別邸として使用していたが、氏の没後、遺族の意志で庭園として残すことを条件に東京都に譲渡された。1978(昭和53)年大田区に移管され、紅梅を中心に植林、拡張が進められ、毎年1月上旬の蝋梅から3月上旬の八重揚羽まで、約2カ月間大田区の区花でもある梅を楽しむことができるようになった。
(左)
茶室「聴雨庵」 (右) 和室の入口。ここでも梅の花が来客を出迎える
園内には、2軒の茶室と1軒の和室があり、どちらも大田区の公共施設として利用することができる(要事前登録、申し込み)。
茶室「聴雨庵」は、政治家の藤山愛一郎氏が所有していたものだが、1983(昭和58)年大田区に寄贈された。芝白金の自宅にあった時は、海外の来賓を招くなど民間外交の実をあげたり、戦時中の1944(昭和19)年には東条内閣打倒の密談がおこなわれたりしたこともあったという。
「清月庵」は、以前は伊東深水氏のアトリエを設計した川尻善治氏が自宅に建てた離れだった。その後、マンション建設が計画され、保存運動が起こり、保存に尽力した大田区在住の華道・茶道家の中島恭名氏が買い取り、大田区へ寄付した。
和室は、庭の池に鯉が泳ぎ、緑に囲まれた落ち着いた空間を演出している。大きな趣のある石灯籠や池に架かる石橋、また庭の片隅にある水琴窟など、梅のシーズンが終わった後も、静かな時にまた来てゆっくり楽しみたい。
(右) 水琴窟
(2018年3月掲載) 地図
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