小さな散歩道

新田神社〜矢口の渡し跡 (大田区矢口1丁目)


新田神社正面

「御神木」の周りは囲まれているが、鳥居のところから入ることができる →

 東急多摩川線「武蔵新田駅」から約3分ほど、駅から続く商店街の続きに新田神社はある。買い物客で賑わう商店街の並びにあるためか、参拝客が途切れない。
  新田神社の歴史は古く、1358年の室町時代にさかのぼる。戦乱の時代、敵の武士に騙されて戦死した新田義興(よしおき、新田義貞の次男)の霊を慰めるために、村人たちが神社を創建した。

  そんな新田神社だが、最近は“東京のパワースポット”として人気だ。その理由の一つが樹齢700年のケヤキの御神木。江戸時代に雷が落ち、また昭和20年の空襲で神社のある矢口一帯が焼け野原になっても、唯一生き残ったという不思議な木だ。昔から、この木に触れると「健康長寿・病気回復・若返り」のご利益があると言われる。御神木の小さな鳥居をくぐり、直接幹に触れることができる。

  また、新田神社は破魔矢の起源という説もあるそうだ。昔から、社殿の後ろに雷が鳴るとピチピチと割れたという伝説の「旗竹」がある。江戸時代、エレキテルを製作した平賀源内が、この竹と五色の和紙で「厄除開運・邪気退散」の魔除けの矢守を作り、これが破魔矢の始まりということらしい。境内にはそれを記念して破魔矢のオブジェがあった。

  破魔矢以外にも、境内には「LOVE神社」と描かれた石碑や、実際にプレーが楽しめる石でできた卓球台などのオブジェがある。これらは現代アートによる街づくり活動「多摩川アートラインプロジェクト」によるもの。2008年にアートディレクター浅葉克己さんが奉納した「LOVE神社」は恋愛成就にご利益があるということで、若い女性やカップルに人気だそうだ。

  新田神社は、境内に恵比寿さまも祀られていて、多摩川七福神の一つになっている。その恵比寿さまにちなんで、社務所には鯛型のおみくじもあり、小さな釣り竿でおみくじを引くのではなく“釣る”ようになっている。(1回300円)

  商店街を南下し、途中、多摩川七福神の一つ毘沙門天を祀る十寄神社を経由して、そのまま住宅街を道なりにほぼ直進し、10分ほどで多摩川河川敷に出る。川の手前にこれも多摩川七福神の一つ、弁財天を祀る東八幡神社があり、鳥井の脇に「矢口の渡し碑」があった。
  神社の前の横断歩道を渡り、そのまま川岸へ。「矢口の渡し跡」の説明プレートによると、ここは新田神社に祀られている新田義興が討死した場所だそうだ。また、江戸時代に平賀源内の劇作の舞台としても有名になり、戦後は多摩川大橋が完成する昭和24年まで利用された区内最後の渡船場として、大田区文化財に指定されている。

東八幡神社の脇にある「矢口の渡し跡」の碑
 

(2017年3月掲載)  地図


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