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(左) 公園入り口 (右)
回遊式日本庭園の中に、広場や子どもの遊び場もある、居心地のいい公園
今回は少し足を延ばして、品川区立戸越公園を訪れてみた。
戸越公園は、東急大井町線「戸越公園駅」から7分ほど。駅の北口を出て、にぎやかな商店街を北へ進み、3つ目の大きな交差点を右折。都立大崎高校の前を通り越し、大崎高校と戸越小学校の間の細い路地に入る。「品川区立戸越公園」の道標が立っていて、ここから入ると公園の裏口にたどり着く。
公園のある一帯には、江戸時代初期、熊本藩主・細川家の下屋敷があった。後に数奇屋造りの御殿や庭園からなる戸越屋敷として整備され、近代になって1935年(昭和10年)、当時の東京市立戸越公園として開園、戦後管轄が東京都から品川区に委譲された。
公園内には子どもが遊べる遊具もあって、小さな子供連れの家族の姿が目立った。その他にも、ベンチで語らう青年、日向ぼっこをしている男性、犬の散歩をしている女性など、いろいろな世代の人たちが公園で思い思いの時を過ごしていた。
戸越公園の魅力は、市民に親しまれている地域の公園でありながら、江戸時代の下屋敷の風情がかんじられるところ。もとは回遊式庭園だったので、中央部にある池の周辺や池に注ぐ小川など、江戸時代の雰囲気を今に伝えている。
注目すべきは二つの門、公園正門にある薬医門と、東門にある冠木門だ。特に薬医門は圧巻で、公園の正面入口から見た光景はまるで大名屋敷のよう。かつての江戸屋敷は、鷹狩りや茶会などを行う別荘のようなものだったとか。そのため、説明板によると“簡素で質実剛健な”様式ということだが、現在の私たちから見ればとても見応えがある。薬医門は、主柱と控え柱の計4本の柱上に冠木や梁などを組み合わせ、その上に切妻屋根を組む形式。棟心(門の中心)がやや前方に寄っているのが特徴で、有名な東大の「赤門」も薬医門だ。
薬医門の右横壁の脇に、竹垣の説明プレートが設置されていた。竹垣はしつらえる場所や性格によって組み方も様々で、日本庭園の景観のひとつだそうだ。
矢来垣は敷地境によく使われ、手軽に造れるわりに丈夫であるため広く使われた。矢来の語源は「遣らい」といわれ、そこから先には人・動物などが近づかないように渡された遮断用の柵で、江戸大名屋敷でも正門付近以外は矢来垣がよく使われていたそうだ。この矢来垣を含め、公園内には他にも四ツ目垣や金閣寺垣など合計7種類の竹垣があり、説明プレートを参考に探して回ってみても面白そうだ。
(2017年4月掲載) 地図
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