小さな散歩道

清川泰次記ギャラリー (世田谷区成城2丁目)



清川氏愛用のライカのカメラなど

昭和17年

昭和13〜15年

昭和21年 京都にて

 小田急線成城学園駅南口から徒歩3分。画家で立体やデザインも手がけた作家の清川泰次氏(1919−2000)の自宅兼アトリエを改装したもの。成城の閑静な住宅街にあって、モダンな建物の前庭には芝生が広がり、季節の花が咲く。
  清川氏は戦後まもなくここ成城2丁目の地に自宅兼アトリエを構えた。2000年に氏が没した後、遺族が氏の生前の意志に基づき、多くの作品と土地・建物を世田谷区に寄贈。区は、世田谷美術館の分館として整備し、清川泰次記念ギャラリーとして平成15年11月に公開した。施設内に区民の文化活動の発表の場として「区民ギャラリー」も設けている。

 天井が高いアトリエの床には油絵の具の跡が処々に残っていた。戦後、「もの」にとらわれない抽象的な表現を追い求めた清川泰次氏が、キャンバスと苦闘した空間と思うと身が引き締まる思いだ。

 清川氏が撮影した写真を中心に展示する「清川泰次と昭和」を12月6日まで開催中。昭和15年に撮影した「祝奉 紀元二千六百年 田園調布駅前」など当時の写真は貴重だ。日の丸の小旗を振って戦地に兵隊さんを送り出す銃後の母や乙女。白い割烹着姿で縫い物をする母親、エプロンをして下駄履きの子どもたち。
  清川氏が生まれ故郷の静岡県から上京し、慶應義塾大学経済学部の予科に入学したのは昭和11年(1936)。「二・二六事件」が起きた年だった。入学してまもなく体調を崩し、しばらく休学。その間に写真と油絵の制作を始めた。再び大学へ。昭和16年、太平洋戦争が始まった。清川氏は軍隊生活や勤労奉仕などを経験し、卒業は昭和19年、25歳の時だった。

 本展では、清川氏が昭和13年(1938)頃から戦後間もない昭和21年(1946)までの間に撮影した白黒フィルムを、新たにプリントして絵画作品とともに展示している。油絵6点、写真55点。

■清川泰次記念ギャラリー  

開館時間/10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日/月曜日(休日の場合翌日)、年末年始、展示替え期間
入館料/一般200円、高校・大学生150円、
      小・中学生・65歳以上・障害者手帳提示100円
      ※区民ギャラリーは原則入場無料
所在地/世田谷区成城2-22-17
TEL/03-3416-1202

(2015年11月掲載)  地図


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