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東急世田谷線の宮の坂駅から5分ほど、世田谷城阯公園は、その歴史を知らなければ普通の住宅街によくある公園のように見える。
駅から公園への道は、城山通りという。かつて世田谷城があったことの名残と思われる名前だ。住宅街の道にしては比較的車がスピードを出して通って行くので、散策中は注意したい。
公園手前に大谿山豪徳寺がある。境内の紅葉がまもなく赤く色づき、本堂や三重塔との景観はきっとすばらしいものになるだろう。
豪徳寺の先、世田谷城阯公園へ。昭和15年に開園した世田谷区唯一の歴史公園で、東京都指定文化財にもなっている。世田谷城阯公園交差点側の入口には、開園説明を刻んだ「東京市」の石碑があった。それによると、東京横浜電鉄(現在の東横線の母体)から土地が提供され、史跡保存の公園として開設した、とある。
かつてここには世田谷城という平城(ひらじろ)があった。初代吉良氏が南北朝の頃、足利基氏から武蔵国世田谷領をもらい受けて築城したそうだ。往時は三方を堀で囲んだ防衛の堅固な城だったらしい。そう言われて見れば、緑色がこんもり生い茂った小さな丘に、石垣が残っている。しかし残念ながら、公園として整備された際に造られた石垣も混在しているそうだ。
それでも、公園内の遊歩道を歩いてみると、かなり技巧的に道が折れ曲がっており、敵が攻めて来た時まっすぐ本丸に到達できないようになっていた。確かに遊歩道がある丘の下は深くえぐれ、堀跡のようだ。散歩に来た近くに住むお年寄りの方が、「近くに武家屋敷もあるよ」と教えてくれた。世田谷城阯公園の紅葉もなかなか自然で風情があるとも。
世田谷区に城跡や武家屋敷が……武士の名残がこんなにあるとは意外だった。
帰りは世田谷線の上町駅から帰路に。
(2015年10月掲載) 地図
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