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樹齢700年から800年といわれている都指定の天然記念物のカヤの木を見に善養寺の境内に行った。
等々力駅から徒歩約15分。等々力渓谷の先にある野毛公園を多摩川方向に歩き、丸子川にかかる赤い大日橋がお寺の入り口。橋を渡ると左と右の高いところに石羊の像が。正面にも左右に架空の神獣・海駝(かいだ)の坐像がある。周囲にも巨大な亀や人型が並ぶ。
赤い山門をくぐって境内に入ると正面に本堂があった。唐招提寺金堂(奈良県)をモデルに造られたようで、大きく立派な瓦ぶきの寄棟造りの屋根には一対の金色の鴟尾(しび=マグロ)が輝いている。
カヤの木はその前にあり、枝を大きく下げていた。
高さ22.6m、幹回り5.25m。多摩川からの強い南風で枝ぶりも北に伸びている気がする。下の方の枝が柳のように下がっていて優雅だ。根元には数珠を持ったカッパ「たま坊」と亀の「たま妃」の石像が置かれている。
このカヤの木には伝説があった。昔、当地を治めていた豪族の娘が、多摩川が反乱する直前に沢カニの親子を高台に助けたことがあった。その後、カニの親子が娘のもとを訪れ、恩返しに一粒のカヤの実を置いていった。娘が高台にまいた実が大きなカヤの木になり、隔年に実を付け、多摩川の水害に苦しむ農民たちを助けた。カヤの木のそばにある2匹のカニが並んだ石像の由来がこれでわかった。
そんな伝説に思いをはせながら、根元の台にこそかけて下から巨木を見上げるとこ新緑に燃える初夏の風がさわやかだった。
善養寺は正式には影光山仏性院善養密寺で、真言宗智山派に属する。本尊は大日如来坐像。開山は慶安五年(1652年)に深沢から遷化(移転)したそうだ。
巨木のカヤの根元で「もう800年も生きているんだ」と眺めていると気持ちも大きくなってくる。それにしても同寺の石像の大きさと数には驚いた。
(2014年6月掲載) 地図
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