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小田急線成城学園前駅北口から徒歩5分。閑静な住宅街の中にある旧猪股邸を訪問。
同邸宅は(財)労務行政研究所理事長の猪股猛氏の邸宅だったところで、竣工は昭和42年(1967)。敷地面積約1,860平方メートル。木造平屋建ての数寄屋造り。主屋は建築家で文化勲章を受賞した吉田五十八氏(1894〜1974)による設計だ。
邸宅の一般公開は平成11年(1999)から。猪股猛氏の長男・靖氏から寄贈を受けた世田谷区の所有で、管理運営は(財)世田谷トラストまちづくりがしている。
門をくぐると、玄関までのアプローチには打ち水が。建物内に二つあるうちの一つの坪庭から入る明かりが玄関を明るくする。広い居間(洋間)では、一部の柱を壁内に収めることですっきりと見せている。庭園側のガラス戸、障子、網戸、雨戸はすべて両サイドの壁に収まるように、またエアコンも視界に入らないよう工夫されていた。こういったことは同庭園の解説ボランティアの方が教えてくれたから分かったことだった。
居間に座ってしばらく庭を楽しむ。赤松をはじめとする多くの木々。居間に面した一帯には杉苔を植えて、水路を巡らした回遊式風の日本庭園だ。左に見える茶室は離れのように見えるが、建物と渡り廊下でつながっていて直接行けるという利便性も考えられている。居間の隣りは、夫人室(洋間)、次ノ間、和室、書斎(洋間)とつづく。
屋根にも特徴がある。高・中・低と徐々に低くなる三段階の屋根に見えるように構成され、さらに玄関周りや茶室への渡りも含めた屋根の構成は複雑に入り組んでいて、日本建築の醍醐味が感じられる。庭園にはもみじの木も多く秋の紅葉も見応えがある。
■世田谷区立 成城五丁目猪股庭園 世田谷区成城5-12-19
開園時間/9:30〜16:30
休園日/月曜(祝日の場合は次の平日)、年末年始
入園料/無料
問合せ/(財)世田谷トラストまちづくり TEL:03-6407-3313
(2012年9月掲載) 地図
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