あなたの町の朝日新聞店 | 小さな散歩道 目次へ |
東急目黒線奥沢駅から3分、大井町線、東横線自由が丘駅から15分。
大きな神社ではないのにお正月三が日は参拝者の行列ができる神社と聞いてどんな神社か訪ねた。
高い木々に囲まれたお宮の正面の鳥居にはワラでできた大蛇が絡まっていた。
長さは約10メートル、胴の直径約25センチ。全体で150キログラムもあるそうだ。
厄除け大蛇と呼ぶ。顔をよく見ると耳、目玉(和紙に黒の二重丸)、上アゴ、下アゴ、舌、ヒゲまでワラで作ってあり、
どこかユーモラスな顔だ。毎年秋の大祭(9月第2土曜と日曜)に造り変えて、新しい大蛇が奉納される。
「カラスが大蛇の目玉をつついていたずらするのよ。なんでだろうね」と参拝に来た近隣の女性が話してくれた。
同神社は室町時代の末期に作られ、「八幡神社」と呼ばれていた。拝殿は再建されたものだが、都内では珍しく、室町期の神社建築様式を採用している。
厄除け大蛇の由縁はこうだ。江戸時代の中頃、奥沢地方に疫病が流行した時に、
八幡大神様の「ワラで作った大蛇を村人が担ぎ村内を巡航させると良い」というお告げがあった。
早速、ワラで大蛇を作り村内を巡行させたところ、疫病が治った。以来、町内を2時間半かけて巡行する「大蛇のお練り」が続いている。
だが、1939(昭和14)年から57年まで18年間途絶えていたことがある。39年に正面の鳥居を木製から石製に再建、
「石に巻き付かせたのでは、大蛇の腹が冷えてかわいそうだから」と取り止めになったという説と、
大蛇づくりに使うワラが手に入らなかったからという説もある。
現在は、毎年福島県からワラを取り寄せ、大祭前に奥沢全体から奉製者が集まり、境内で大蛇造りをしている。
「大蛇のお練り」は世田谷区無形文化財に指定されている。
境内には弁財天、子育て地蔵、八幡小学校発祥の地の石碑などいろいろあって興味深い。
取材中、ひっきりなしに参拝者が訪れていた。その一人にお話を聞くと、一昨年、昨年は364日、今年は365日達成出来そうだと。
地元のお社を大事にしたい」と。元日は混むので、未明のお参りをすすめる、と教えてくれた。
■奥澤神社/TEL:03-3718-2757
←絵馬「厄除け大蛇」
(¥1,800〜¥2,500の3種類)
(10年1月掲載) 地図
小さな散歩道 目次へ | 前へ | 次へ |