小さな散歩道

富士見橋  大田区仲池上1丁目、上池台5丁目

 

  地下鉄の都営浅草線西馬込駅を出て国道1号線、「公園通り」を通り、2月号で掲載した「馬込給水所」前を過ぎると、新幹線の上を通る「新根方橋」に出た。その1本西寄りに掛かるのが「富士見橋」だ。
  表通りではないせいか、車は少なく人通りもそれほど多くはない。橋の下を東海道新幹線や横須賀線が走っているため、橋の欄干や周辺は高い金網で厳重に囲まれている。「このあたりで遊ばないように」とか、「不審な人や車等を見かけられた方は警察(110番)にご連絡下さい」の看板も張ってあり、自分も不審者に見られそうで気が気でない。
  それでも、金網越しに目を引くのは、橋の西側の眺めの良さだ。新幹線、横須賀線とも多摩川を渡るまで一直線に伸びているため、線路の上を遮る建物などがなく、視界が開けているからだろう。この日は快晴だったが、遠方はややかすんでおり、丹沢らしき山並みがうっすらと、見渡せるだけだった。空気が澄んでいる時はきっと富士山が見え、それが橋の名前の由来になっていると、思われた。
  橋のたもとに「相生坂(あいおいざか)」と黒く書かれた木の標識が立っていた。その説明によると、新幹線を挟んで両側に二つの坂が並んでいることから、この坂を相生坂といい、昭和初年耕地整理により出来た坂である、と記してあった。坂が生まれる昭和以前、この地はどんな姿をしていたんだろうか。ひっきりなしに通る新幹線や横須賀線の音を聞きながら、その昔に思いをはせた。

(08年6月掲載)  地図


小さな散歩道 目次へ 前へ  次へ