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東急多摩川線の鵜の木駅から徒歩約3分、住宅街の中に、松の大木が生い茂っている丘が見えて来た。 公園の名が、松の多さと見事さに由来しているのは一目瞭(りょう)然だ。
なだらかな斜面の道を上って行くと、目に付いたのが、細い切り通しのような道。道の幅は1メートル強、長さは6メートルほどだ。 奥には石を積み上げた門のような入り口が見え、透明な板でふさがれている。その中にも穴があるようだ。 道の脇に立つ看板には「鵜の木一丁目横穴墓群(よこあなぼぐん)」と書かれている。この穴は横穴墓だったのだ。
それによると、多摩川流域の横穴墓は古墳時代(6世紀末)から奈良時代(8世紀前半)にかけて造られた地域の有力者の墓らしい。 鵜の木1丁目の横穴墓群は、公園の東斜面に造られており、これまでに7号墓が発掘調査された。 なかでもこの6号墓は、大田区周辺に見られる切石羨門(きりいしせんもん)構造という特徴を持つ貴重なものであることから、 発掘当時の姿で保存してあるのだそうだ。
横穴墓を過ぎて枕木のように太い角材を組んだ階段を上って行くと、広々とした芝生の原っぱに出た。 広場は多少凸凹があって平らではないものの、遊具などは一切なく、木製の星型や丸太の形をしたベンチがあちこちに点在しているだけ。 かえって落ち着けそうだ。
見渡すと60本前後はあろうかと思われる松の木の間から、そびえ立つ高層ビル群が垣間見え、眼下には住宅街もひしめいている。 こんな大都市の中で、ここだけがゆったりと違う世界だ。たたずむと、古代からの悠久の流れを感じさせてくれるようだった。
(08年4月掲載) 地図
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