小さな散歩道

馬込給水所 (大田区西馬込2丁目)

 地下鉄の都営浅草線西馬込駅を出て国道1号線(第二京浜)から「公園通り」に入り、 住宅街を歩くこと10分足らず、ドーム型の屋根をした巨大な建築物が二つ見えて来た。
 灰色をした建物に、窓らしいものは見えない。高さ15〜20メートルほど、直径は30メートル以上だろうか。 下から上に向かって胴体が細くなっており、中世ヨーロッパの城塞(じょうさい)を思わせる荘厳さがある。 そういえば、上部にある四角い形をした横一列のくぼみは、銃眼のようにも見える。

 建築物を囲んでいる厳重なフェンスに沿って歩いた。そのフェンスに取り付けられていたのは、 「水道用地 はいってはいけません 東京都水道局水運用センター施設管理課」と書かれ、 ヘルメットの人が大手を広げて遮っている姿が描かれた看板。ここは水道の給水設備だったのだ。 道理で窓はなく、貯水槽か水桶のように、太い胴体をしているわけだ。
 さらに歩くと、「給水拠点」と書かれた看板が張ってあり、「大地震が発生するなど、 震災時に大規模な断水が発生した場合は、ここで水道水を受け取ることが出来ます」とあった。 近く予想される首都圏の直下型地震などには、この場所が都民の重要な給水拠点であることを宣言しているわけだ。
 頑丈なフェンスの内側で、目に付くのは奇麗に手入れされた芝生や植木だけ。内部に人気はない。 一見静かだが厳重な管理の下、この巨大な施設が都民の大切な水源を守っている、頼もしい「城壁」のように思えて来た。  

(08年2月掲載)  地図


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