続・しごと日記
冬の配達 その1 (2009年1月号掲載)
新聞をポストまで取りに行くのもおっくうになる、寒い冬です。
我らが新人君も、入社してまもなく1年。新人君にとって「最後の試練」となる冬本番です。新聞販売店でも最も厳しい季節です。新人君は、この冬をどのように過ごしているのでしょうか?今回も新人君の日記をのぞいてみましょう。
○月×日
午前0時、目覚まし時計が鳴る。
朝刊出勤の時間だ。んんん……布団から出るのがつらい……。
最近、毎日こんな感じで2度寝、3度寝を繰り返す。おかげで毎日タイムカードは遅刻すれすれだ。 「えいっ」と気合を入れて布団から抜け出す。
出勤して配達の準備が終わっても、今度は配達に出発するのにひと踏ん張り必要になってくる。ベテランの先輩たちはさっさと配達に出発するのに、なかなか腰が上がらない。
この頃、寒さのせいでバイクのエンジンのかかりが悪い。そのせいにしている情けないぼくがいる。何はともあれ、「えいっ」と気合を入れて配達に出る。いったいぼくは1日に何回気合を入れているんだろう……。
配達に出ると、やっぱり寒い。この一言に尽きる。先輩に習った軍手2枚の重ね着(?)は効果抜群だ。これがなければもっとつらいだろう。寒いながらも配り進んでいく。
「いったい今の気温は何度なんだろう?」
そんなことを考えながら配達していると、凍った路面にタイヤが滑りそうになる。
「そういえば、このお宅、昨日の夕刊のときに家の前で洗車していたなあ……」
目を凝らしてみると、あたり一面、凍結した路面がキラキラと光っている。「ええーっ」と思いながらハンドルを持つ手に力が入る。
先輩によると、雪の日はもっと大変だという。
天気予報で『雪』の予報があると、前日は早めに仕事を切り上げてバイクのタイヤにチェーンを巻いたりしておくそうだ。雪が降り出すと、店舗の前で雪かきが始まる。バイクに新聞を積み込むときに滑らないよう、みんなで必死になって雪かきをする。新聞も雪に備えて早めに販売店に輸送されてくるらしい。
どうか雪が降りませんように……。
冬の配達 その2 (2009年2月号掲載)
「雪が降りませんように」と祈っていた新人君の日記を今月ものぞいてみましょう。
○月×日
店長に雪が降った時の配達の話を聞いたことがある。
坂道を登りながら新聞を配り切ったけど、その間に雪が積もりすぎて、坂を下れない。「肩ひも」という帯(新聞少年が肩から斜めに掛けて徒歩で配っているイメージのあのタスキ)に、残りの新聞を挟んで歩きながら配ったそうだ。
新聞がなくなると、坂の頂上に止まっているバイクまで新聞を取りに行き、また徒歩で配りながら下りてくる……そんなことを何回か繰り返して、ようやく坂のふもとまでたどり着いたら、最後のお宅のポストに手紙と一緒に小銭が貼り付けてあったそうだ。手紙を開いて読んでみると「新聞屋さん、雪の中ご苦労様です。このお金でコーヒーでも飲んで暖まってください」と書いてあったそうだ。
そのお宅は、集金の時なかなかお会いできなくて「新聞代をポストの中に入れておくので持って行ってください」なんて言われ、そのたびに「ポストにお金を入れておくのは物騒だし絶対やめてください」といつも対応していたが、その時だけは、小銭をありがたく頂戴した。店長の中では一番心に残っているエピソードだという。
雪が降ると、バイクにチェーンをするそうだ。そんなの運転したことも見たこともないけど、チェーンの準備をしてから出発し、走り出しても雪で前が見えず、雪のあるところを選んでゆっくりしか走れず、下り坂はすべってフラフラで、バイクに積む新聞の量も減らさないと重さですべって運転にならないので、一度にたくさん積めずに何往復もすることになるので、いつもより大幅に時間がかかってしまうという。
うーん、やっぱり雪は降らないでほしい……。
こんな祈りばかりしている新人君も、この寒さを乗り越えて春の訪れを聞くようになると、身も心もたくましくなって新しく入社してくる後輩たちに自分がいろんなことを教えるようになるのです。
次回で「続・しごと日記」も最終回。新人君は、春先の引っ越しシーズンを体験することになります。
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