続・しごと日記
引っ越しシーズン (2009年3月号掲載)
○月×日
まだまだ寒いけど、もう3月だ。
先輩が言うには「転出入の多い春は、1年で一番の繁忙期」なのだそうだ。
3月〜4月は、進学、就職、転勤なんかで、引っ越しの多いシーズンだ。1年間の引っ越し件数の実に3割以上がこの2カ月間に集中するそうだ。この時期に、どれだけ新規のお客様を増やすことが出来るかで、その年の販売店の命運が決まるらしく、それが「繁忙期」と言われるゆえんらしい。
3月に入り、まず学生の転出が始まる。1人暮らしをしていた学生が卒業や就職で、住んでいたアパートを引き払って転出していく。アパートによっては人の気配がまったく無くなってしまうこともあって、「取り壊されるのかな?」と思ってしまうくらいの勢いで空室が増えていく。
学生の転出がひと段落すると、今度は家族連れの転出入が続く。これは、お子さんの卒業や進学に合わせて3月中旬から下旬にピークを迎える。
最後に、入学に合わせて学生の転入が増えてきて……と、先輩が「転出入」について熱く語っている。
先輩の話をあくびしながら聞いていると、「引っ越しするから購読料の精算に来てほしい」と、お客様からの電話だ。また、転居先の新居への配達開始手配を依頼される電話も数多くいただく。
ただ、最近は若い人を中心に、引っ越しの連絡をいただけない方や結構遅い時間に引っ越しされる方も増えてきた。そうすると、ぼくらもなかなか気が付かない。新聞をポストに入れようとしたら、空き家になっていた……なんてこともあった。
また、購読料の精算もしないまま引っ越しされてしまうこともある。とは言っても、故意ではなく、引っ越しのバタバタでうっかりしていたというのがほとんどだ。先輩が新人の頃に、連絡も無く引っ越しをされたお客様がいて、配達の合間に転居先の川崎市まで集金に伺ったこともあるそうだ。
引っ越し時の精算は、親しくしていただいていたお客様との別れを意味する。遠方への引っ越しだと、またお会いすることなんて無いかもしれない。でも、必ず口をついて出てくる言葉がある。
「また機会がありましたら、よろしくお願いします」
知らない人が聞けば、営業用のあいさつだなって思うかもしれない。でも、そうじゃなくて、自然と言葉が出てくる。そのお客様は覚えていないかもしれないけど、「毎日配達ご苦労様」なんて暖かい言葉が胸にしみて、やっぱり別れは寂しいもんだ。
今回で「続・しごと日記」は終了です。次号からは「しごと日記・Q&A編」をお送りします。
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