続・しごと日記
[3] 配達始め (2008年10月号掲載)
我らの新人君も、今回いよいよ配達を始めます。バイクを運転する姿もずいぶんと様になってきました。
○月▲日
今日から朝刊の配達を始めた。
とは言え、今日はまだエリアの半分だけだ。半人前の僕には、まだ決められた時間内に全部の配達を終えることは難しいからだ。
配達は、遅くとも朝刊は6時、夕刊は5時までに終えることが販売店のルールになっている。「読者の皆様のお出かけ前に朝刊を届け、帰宅前に夕刊を届ける。これが新聞配達の鉄則だ!」と叫ぶ先輩の言葉にも、「なるほど」と納得。各配達エリアも、この時間までに配達を終えることができるような区域割りになっているらしい。
事前の訓練のかいがあって、思ったよりスムーズに配達できる。でも、やっぱりまだ厳しい。先輩みたいにうまくはいかないものだ。
ポストに新聞を届ける、それだけの作業でも結構てこずる。回覧板や郵便物が差さったままになっていたり、ポストの前の路上に車が停めてあったり……。なんだかんだで、エリアの半分を配達し終わったのは、朝の5時。夜も明け始めている。今日のペースで配達していると、1人で全部配達し終えるのに何時間かかることやら……。
「明日から少しずつ配達する件数を増やしたりしていくから」
先輩の一言に正直あせる僕でした。
○月×日
今日、初めて1人で全軒配達した。終了時刻は5時半。初めて配達した日から考えてみると、すごい進歩だ。我ながら感心。毎日練習したかいがあった。先輩からも合格点をもらった。
配達中も気持ちに余裕がある。鼻歌を歌いながら配達をしていると、ポストの裏の暗闇から「ニュッ」と手が伸びてきた。びっくりして声をあげてしまったけど、その腕の正体は、配達先のお宅のご主人で、ポストの裏で新聞を待っていたようだった。
「ご苦労様」
「おはようございます……」 僕も、持っていた新聞を手渡す。
今日、初めて1人で配達できた。初めてお客様とも接した。自分が『新聞屋さん』になったことを初めて実感した1日だった。
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