続・しごと日記

[2] バイクに乗る  (2008年9月号掲載)

 入社した新人君は、少しずつですが仕事を覚え始めています。
  「最近新しい子が新聞を配っているわね……」「今回の集金はいつもと違う子が来たわね……」と思われた方もいらっしゃると思います。
  今回も、そんな新人君の日記をのぞいてみましょう。

○月△日 「バイクの練習」

  今日は朝からバイクの練習だ。原付のスクーターには乗ったことがあるけど、「カブ」は初めてだ。先輩のバイクが広い道から狭い道へと進んでいく。置いていかれまいと先輩の後ろをフラフラしながらついて行く。カブの運転の大変なところは、一にも二にもギアチェンジ。「それさえ出来れば運転も様になってくるよ」と先輩が言う。

○月×日 「順路取り」

  出勤すると、すぐに順路帳、いわゆる配達のアンチョコ(カンニングペーパー)を持って先輩に連れ出される。目的地は担当する予定のエリアだ。順路帳の1ページ目の家から順を追って配達先を説明されていく。この作業を「順路取り」というのだそうだ。
  「新聞なんか家さえ分かれば大丈夫だろう」なんて、高をくくっていたけど、実際に一軒一軒まわっていると、そんな考えを改めさせられる。
  門扉に3つもポストが付いている家なんていうのもある。よく見ると、それぞれのポストに「新聞用」「郵便用」「回覧板用」と書いてある。小さい字だから朝刊配達の時は気付かないかもしれない。3つもポストがある家はそうめったにないけど、2つポストがある家は結構あるんだな、これが!
  新築の二世帯住宅やポストを新しくしたけど古いのも残っている家。アパートで、ドアポストに新聞を配達する時の音が気になる読者が別のポストを用意していたり……いろんな理由があった。
  そういえば、実家も新聞用と郵便用の2つのポストがあったなぁ……なんて考えていたら、背後で先輩がそっとささやいた。
  「ここの家、ポスト間違えると怒られるから注意しろよ」
  うーむ、気をつけなくては……。
  生垣で隠れたポストの位置に注意、足元注意、足音注意、猛犬注意、バイク乗り入れ禁止……などなど、よく見てみると注意・禁止事項のオンパレードだ。こういうのも“配達の大変さ”なのかなぁとも思う。
  明日からは「空(から)まわり」といって、朝からバイクで配達順に従ってエリアをグルグルまわる。そうすることによって、なんとなくでも配達順路が身に付くらしい。これをまじめにやっておけば、配達の所要時間がある程度読めるようになって、新人が配達しても読者の皆様に迷惑をかけることが無くなるそうだ。
  「空まわりの時間が短くなれば、いよいよ朝刊に出勤できるぞ」
  「はいっ!」
  朝刊出勤という店長の言葉に奮い立つのでした。

  ――とまぁ、こんな具合で我らが新人君は少しずつですが、毎日成長しています。集金やごあいさつまわりで皆様のお目にかかれる日はいつになるのでしょうか。

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