小さな散歩道

中神熊野神社(昭島市中神町1‐12‐7)

 
(左)社殿  (右)鳥居   (下右)拝殿の扉に施された彫刻

 中神駅南口から江戸街道を渡って、中神停車場通りを南へしばらく進む。奥多摩街道に面する福厳寺の手前で右折し、住宅街の中を進んでいくと、崖の上に鎮座する中神熊野神社に着いた。
  中神熊野神社は、延文5(1360)年の創建と伝えられており、旧中神村の鎮守であったそうだ。嘉永5(1852)年に再建された拝殿と江戸時代に作られたという本殿は、昭島市の指定有形文化財に指定されている。

  扁額に「三霊殿」と記された拝殿は、古びた木の風合いが神社の歴史を物語っているようだ。正面の扉に施されている花の彫刻を眺めていると、近所の高齢の女性が「昔はお正月になるとすごい人出だったのよ」と教えてくれた。

  社殿右奥には玉垣建設記念碑があり、左手には神輿庫があった。広い境内を散策していると、時折「ドサドサッ」という音が聞こえてくる。何事かと思って耳を澄ませてみると、崖下から伸びる緑から木の実が次々に落ちているようだ。社殿左奥には境内社があり、その傍らでは親子連れが虫捕りを楽しんでいた。

 
(左) 市の天然記念物指定・大イチョウ  (右) 急な斜面に作られた社殿に続く階段は現在使用不可に

  社殿横の石段を下り、崖下に向かうと、「村内安全」と刻まれた灯篭の先に立派な大イチョウが伸びていた。神社のご神木であるこの大イチョウは、樹齢約400年、幹周り6.5メートルの大木であり、市の天然記念物に指定されている。訪れた日は11月中頃、まだ大イチョウの葉は青々としていたが、辺りには多い年で500リットルも獲れたというギンナンがたくさん落ちていた。

  ギンナン拾いに精を出す人の姿を横目に崖の近くに向かうと、玉垣の間から急階段が伸びていた。あまりにも急な階段であるため、通行禁止になっていた。この階段は、大イチョウ先の鳥居から崖上の社殿に続く本来の参道であったのだろう。近くで見ると、階段はかなりの急角度であるが、手すりもなく、足の踏み幅も狭い。かつての人々はこの階段を上ってお参りしていたのだろうかと思うと、ちょっと恐くなってくるほどだ。
  日が暮れると境内は静寂に包まれるが、一帯には「ドサドサ」という音が轟いていた。

(2021年12月掲載)  地図


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