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富士塚の鳥居
昭島駅の南口を出て、江戸街道を東に進み「昭島昭和町5丁目」の信号先の細い道を右に入っていくと、緑の中にひっそりとたたずむ天珠惣十稲荷神社に着いた。
赤い鳥居をくぐって境内に入る。富士塚を上る階段の手前に「天珠惣十稲荷大明神(てんじゅそうじゅういなりだいみょうじん) 浅間社 神明社」と書かれた石碑が建っていた。その傍らにある案内板によると、天珠惣十稲荷は天保6年(1835年)、旧上川原村村民の神がかり事件に起因して建立されたものだという。
神がかり事件とは、当時、病に伏していた村民に肥後熊本の稲荷が乗り移り、「富士塚にお宮を建ててほしい」と言ったそうだ。そして惣十稲荷を建てたところ、村民の病はたちどころに治ってしまったのだとか。なんだか不思議ないわれのある神社である。
階段を上り、二の鳥居をくぐると、富士塚の頂上に鎮座する惣十稲荷が見えてきた。頂上部はきれいに整備されていて、柵も付けられている。富士塚の頂上に稲荷を建てたというよりも、頂上部に頑丈な土台を作り、その上に惣十稲荷が乗っているという感じだ。惣十稲荷の社殿は古めかしさを感じさせるが、これは昭和50年代に再建されたものだとか。社殿の中をのぞいてみると、独特の細長い目が描かれた2体の狐が座っていた。
神社の祠内には狛犬ならぬキツネの像が
惣十稲荷の左手には、真新しい石造りの小さな祠があった。特に何も書かれてはいなかったが、こちらが浅間社のようだ。階段手前の石碑には2つの神社が並列で書かれていたが、祠の大きさには随分と差があるものだ。
惣十稲荷の社殿に戻り、一日も早く平穏な日々が訪れることを祈って、富士塚を下りた。
境内には緑が多く茂っていて、イチョウやモミジなど、様々な木々が伸びている。富士塚に植えられた植栽もよく手入れがされており、参拝者の目を楽しませてくれていた。
境内の左奥に進んで行くと、石段に丸く囲われた中に小さな祠が建っていた。この祠が神明社のようで、浅間社と同じ位の大きさだろうか。こちらは境内の奥まった場所ということもあり、ちょっと神秘的な雰囲気のある一帯だ。祠の傍らからは、松が天高く伸びていた。
なお、境内の正面には稲荷公園がある。長方形の園内には小さな滑り台や砂場の他に、ネットでトンネルを形作った珍しい遊具も置かれていた。
(2020年5月掲載) 地図
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