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上のママ下
南武線の矢川駅を降り、駅近くの踏切を渡って南へ。突き当たる甲州街道を西へ進むと、「いずみ大通り」が南へ延びている。この通りをしばらく進んでいくと、「ママ下橋」にたどり着く。近くにある階段を下りていくと、きれいな小川が流れていた。
ここは青柳段丘と呼ばれる段丘の崖下にあたり、一帯は「ママ下湧水公園」として、豊かな自然環境が保全されている。崖下を流れる小川の上流に向かってみると、「上(かみ)のママ下」と書かれたプレートがあった。説明によると、段丘崖のことをこの辺りでは「ママ」や「ハケ」と呼んでいたそうだ。この崖下から湧き出る地下水だから「ママ下湧水」と呼ばれ、「東京の名湧水57選」にも選ばれている。昭和の初めまでは、この湧き水を利用してわさびが作られていたというから驚く。
こちらの湧水上流部では、崖下から水がコンコンと湧き出ており、傍らには風情ある木製の階段が設置されている。
辺りには水田が広がっており、のどかな雰囲気だ。近くのベンチで一息ついていると、犬の散歩に訪れた女性が、暑い日だったので犬の足を小川に入れてあげた。だが、犬は驚いた様子ですぐに水を出てしまった。「そんなに冷たいのかな」と思って澄んだ小川に手を入れてみたら、水は大変に冷えていた。ここには涼を求めにやってくる人が多いというのも納得だ。
橋の下に戻ってみると、子どもたちが声を上げながら水遊びに興じていた。バケツで水かけっこをする子や、親水エリアでお風呂に浸かるように水に浸かる子どもたちの姿があった。また、こちらでは小川を渡す2本の小さな石橋がいい雰囲気を添えていた。
小川は石垣に守られながら「ママ下橋」をくぐる。この橋の下では、シートを広げた家族連れの姿があった。ここは傍らに水が流れる日陰ということもあり、ちょっとした避暑エリアということだろうか。小川となった湧水は辺りの水田を潤しながら、この先で矢川や府中用水と合流する。「ママ下橋」の先は一面に水田が広がっており、国立の原風景を感じられるような一帯となっている。辺りを散策していると、水田の傍らで鴨が羽を休めていた。
(2018年9月掲載) 地図
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