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(左) 中神日枝神社 (右) 中神日枝神社鳥居
立川駅北口から「拝島駅・拝島営業所・昭島駅南口」行きのバスで「中神」で下車。奥多摩街道を少し戻ると、三方を高い石垣に囲まれた「中神坂」の交差点に着く。この一角の石垣上に建っているのが中神日枝神社だ。
中神日枝神社の創建年代などの詳細は分かっていないが、中神熊野神社よりも古い創建であり、中神村の鎮守として祀られていた神社だったと伝えられている。また、地元では「山王様」とも呼ばれているそうだ。
石垣の間にある階段を上り、鳥居をくぐると、参道の先に本殿が構えている。小さな神社であるが、歴史を感じさせる佇まいだ。本殿右手には石仏・庚申塔があり、享保13年(1728年)の銘がある。その傍らには紅色の小さな石が置かれており、そこには「がまん・どりょく・けいぞく」と書かれていた。
また、日枝神社の対角線上には福巌寺があり、高台に建つこちらの境内は眺望がよく、多摩大橋や遠方の山々を見渡すことができる。
バス停近くの奥多摩街道沿いには、観音堂恵日庵がある。こちらは福厳寺の境外仏堂であり、現在のお堂は文化2年(1805年)に建てられたもの。かつては尼僧が在住したこともあるが、おおかた老僧の隠居所にあてられていたという。明治後期から大正時代には、中神村および、中神村外八ヶ村組合村役場として利用されていたそうで、「自治行政のおこり」という石碑が建っている。
石垣で囲われた用水路を渡って境内に入ると、傍らにはお地蔵様などの石塔が立ち並んでおり、小さな祠もあった。お堂は青銅色の屋根が美しく、趣きある造りだ。境内の緑もきれいに刈られていて、中庭では花が散った後の桜の葉の緑が目に沁みるほど鮮やかだ。入口近くに伸びる松の木もいい風情を添えていてせわしない街道の喧騒を忘れてしまうほど、心落ち着く場所である。かつて山王様も、老僧もこちらでのんびりと世間を眺めていたのかもしれない。
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(2016年5月掲載) 地図
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