小さな散歩道

旧日立航空機立川工場変電所跡  (東大和市桜が丘2丁目)

 玉川上水駅北口を出て徒歩約5分で都立東大和南公園に着いた。公園の中を流れている川で水遊びをしている子どもたちの歓声が夏の青空に響く。
 公園内を北に進むと400メートルトラックのある運動場の先にコンクリートの古い2階建ての建物が見える。 戦前にこの場所にあった飛行機のエンジンを作る日立航空機立川工場に送電するための変電所跡だ。

旧変電所の前は市民の散歩コースになっている。脇の花壇は手入れが行き届いていて四季折々の花が咲いている。
今なお生々しく残る弾痕の痕
花壇に埋もれるかつての工場の活動をうかがわせる航空機のプロペラ
  敗戦色が色濃くなった1945年には同所にあった同軍需工場は3回の爆撃を受けて工場群は壊滅状態に。 工場に電気の供給をしていた変電所も爆撃と機銃掃射を受けた。その弾痕の跡が今も生々しく、建物の壁面にありありと残っている。 現在、公園になっているところは同工場とそこに勤務する従業員の住宅が多くあったところだそうだ。
  旧変電所の周囲は同公園ボランティアの「花葉心雑草の会」が手入れをしていてアガパンサスやブルーサルビアの青い花が精彩を放っていた。 花壇の中に当時のエンジンがぽつんと置かれているのが印象的だった。その柵内には空襲でなくなった100人の名前が戦災者慰霊碑に刻まれていた。 解説版を読むと、戦後、同建物はクレーターのように刻まれた弾痕跡を残したまま内部の変電施設を更新しながら1993年(平成5年)まで、変電所として使われていたというから驚きだ。 その2年後、市民たちの声によって東大和市の文化財に指定されたそうだ。
  戦禍を受けたままの姿を残している文化財として大変貴重な建物だ。平和のシンボルとして、いつまでも大切にされることを願わずにはいられない。
  園内は120種の樹木と新緑と花や実、黄葉を観賞でき、散策にはもってこいのロケーションでもある。

■東大和市文化財 史跡・戦災建造物
 旧日立航空機株式会社立川工場変電所
  (東大和市桜が丘2-147)
  この建物は、昭和13(1938)年に建設された航空機のエンジンを製造していた軍需工場、 東京瓦斯電気工業株式会社(翌年、日立航空機株式会社立川工場<立川発動機製作所>に改名)の変電所です。

(2011年8月掲載)  地図


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