小さな散歩道

石川酒造(福生市熊川)

酒屋の目印である酒林がつるしてある長屋門 明治時代に玉川上水からひかれた熊川分水が今も流れている

雑蔵(右)と長屋門の間から夫婦欅を見る  水がきれいな多摩地域には酒蔵が多い。「多摩自慢」で知られる石川酒造を訪ねた。
  青梅線拝島駅から徒歩15分。長く続く白と黒の壁。敷地内はきれいに掃き清められ、 酒造りが行われている冬の醸造所は、全体が張り詰めた空気に包まれていて気持ちがいい。
  石川酒造の歴史は、文久3(1863)年に始まった。この熊川に酒蔵を建ててから120年経つという。  入ってすぐ目の前の大きな蔵が本蔵。明治13(1880)年の建築で、25メートル×28メートル、高さ13メートル。 国登録有形文化財に指定されている。11月から3月まで「多摩自慢」を醸造している蔵だ。 その右手前が酒の熟成に使われている土蔵の新蔵。明治30(1897)年の建築で、これも国登録有形文化財。
  そばには樹齢700年の御神木と井戸があり、酒造りに大事な米の神様の大黒様と水の神様の弁天様がまつられていた。
  酒林(杉玉)がつるされている築230年の長屋門(国登録有形文化財)の左の「麦酒(ビール)釜の館」を見る。 明治20(1887)年は日本のビール草創期。石川酒造も地ビールの醸造を始めた。当時の麦酒釜をある願いをかけて保存していたという。 そのわけが雑蔵の2階の「石川酒造史料館」で分かった。明治時代にビールを造り始めた時は現在のような栓(王冠)の技術がなくコルクだった。 出荷途中ガスが溜まりコルクが飛ぶというアクシデントが続出し、やむなく製造を中止した。 ビール製造の復興を願って当時の釜を保存していたというわけ。 平成10(1998)年、地下天然水100%、無ろ過の地ビール「多摩の恵」の醸造に成功した。111年ぶりの復興だ。 向蔵ビール工房で出来たビールをビアレストラン「福生ビ―ル小屋」や和食・そば処「雑蔵(ぞうぐら)」で味わうことができる。
  また売店「酒世羅」ではふな口から出る酒をそのまま樽に詰め、多摩自慢・しぼりたて生原酒の「かめくち」として量り売りしている。 酵母や酵素が生きている「しぼりたてのお酒」で今までは蔵人しか味わえなかったもの。試飲すると、フレッシュでフルーティな味がした。

新酒しぼりたて「かめくち」の量り売り 
季節限定で720ml 1,250円⇒

←雑蔵で
多摩自慢しぼりたてにごり酒「さらさら生酒」
(とっくり1,000円、グラス400円)と、天ざる(1,300円) 


■石川酒造/TEL:042-553-0100   年始は5日から営業。
●福生の地ビール小屋は火曜休み、ただし1月5日の火曜日は営業し、1月12〜19日まで休む。
●雑蔵は木曜休み。年始は9日から。

(2010年1月掲載)  地図


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