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多摩大橋北側の「くじら運動公園」入り口から、多摩川の土手を歩いて約15分、 やっと八高線の長い鉄橋の全貌が見えてきた。時折電車が、音を響かせて渡る。 その鉄橋の手前100メートル足らずの土手上、鎖で囲まれた一角に2対の車輪が展示されていた。
車輪は鉄製で、2枚の輪が一本の軸でつながれており、鉄道用であることは一目でわかる。 赤さびた2対は、特に大きな傷もなく、原型をとどめているように見えた。
そばの説明板には、「八高線列車衝突事故」とあった。太平洋戦争の終戦からわずか9日目の 昭和20年(1945年)8月24日、小宮―拝島間の多摩川鉄橋上で、上り下りの列車が正面衝突し、 少なくとも105人が衝突の衝撃や、多摩川に流されて死亡する大惨事が発生したのだという。
展示されている車輪はこの衝突した車両のものと思われ、最近、鉄橋付近から発見された。 事故を後世に伝えるため、平成16年に設置されたのだそうだ。
犠牲者の多くは、故郷に向かっていた復員兵や疎開先から自宅に帰る人々とのこと。 やっと生きて帰れると思う間もない惨事に巻き込まれ、さぞ無念だったことだろう。
その事故から60年。周辺は今、犬を連れての散歩や、ジョギングの人たちがひっきりなしに行きかっていた。
(08年10月掲載) 地図
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