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奥多摩街道の歴史民俗資料館入り口を示す案内板に従って坂道を下り、同資料館の前を過ぎて間もなく、住宅地の中に一段と高い瓦ぶきの屋根が現れた。周りは竹を編んだ塀だ。手前右に「臨済宗建長寺派 紫雲山常楽禅院」と彫られた石碑が、堂々と立っていた。
門へ向かう石段を登る。金属製の門扉の片側が開いていたので、そこからお邪魔することにした。高い敷居の門に一歩入ると、目の前に本堂が迫っていた。正面には白木の柱が4本。がっしりとして、いかにも力強そうだ。横木と交差する4カ所にはそれぞれ唐獅子の彫刻が据えられ、横木の両端にも彫刻が施されている。屋根瓦はいぶし銀のような色。正面の屋根の両端には、鳳凰(ほうおう)と思われる翼を広げた鳥の焼き物が据えられている。
でも、何といっても一番目を引くのは大屋根の両端や四隅に置かれた鬼瓦だろうか。目をつり上げ、牙をむき出し、あたりをにらむその形相は、「悪は絶対許さないぞ」という、強い魔よけの意志が込められているように思われた。魔物も早々退散しそうな威圧感だ。
本堂の左手の斜面には墓地が広がっている。その入り口近くに、20メートルは越すかと思われる一本のケヤキが立っていた。根本に一体の石像が安置されている。右手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、左手は何かを捧げたようなその像は、どこか人間的でユーモラスな表情。屋根の鬼瓦と好対照を描いていた。
(08年9月掲載) 地図
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