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青梅線昭島駅南口を出て大師通りから新奥多摩街道、奥多摩街道を超えて30分余り、多摩川に掛かる「拝島橋」にたどり着いた。
橋のたもとの小さな公園の片すみに、「拝島の渡し」と書かれた金属板が埋め込まれていた。それによると、拝島橋の上流100メートルほどの所に、その昔【拝島の渡し】と呼ばれる日光街道の渡し場があった。江戸時代初期に八王子千人同心が日光勤番に赴く際の往還路として開かれた公道で、上州方面と八王子を結ぶ重要な街道だったという。
その渡し跡はどこにあるのだろうと、すぐそばの堤防に登ってみた。すると目の前に青々とした芝生の、広々とした広場が現れた。河川敷を利用した自然公園だ。そのほぼ中央に何本か、木の茂みがあり、その根本に白い看板が立っている。「拝島の渡し跡」とあるからここがその場所だろう。看板には、昭和10年代には客を乗せたままの定期バスを渡したこともある、と書かれてあり、ずいぶんと丈夫で大きな渡し舟だったろうなと思わせる。
公園は、河川敷とは思えないほどの大木から低めの木まで、何十本も生えている。そんな1本の下に、「多摩川のコゴメヤナギ」と題した看板が立っていた。そこには「コゴメヤナギは豪雨や台風による増水で上流から流され自然生殖したもの」とあり、激流に耐えられる大変めずらしい樹木のひとつ、と書かれていた。貴重な自然を守ろうとの呼びかけだ。
園の一角はキャンプ場で、ひと気のないバーベキューコンロが、ひっそりと立っていた。
(2007年10月掲載) 地図
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