小さな散歩道

地蔵菩薩坐像(坂下地蔵)  日野市日野本町3丁目

  

 日野駅を出て、日野駅東交差点から宝泉寺前の坂道を登ると、 JR中央線を背にして立っているようなお堂があった。 赤い屋根をしたお堂の左手前には青々と茂る大イチョウ、 右手前には大きな石の地蔵が2体と小さな地蔵が6体、表側を向いて並んでいる。
 お堂の屋根のてっぺんには、先のとんがったぎぼしが据えられ、 軒下には木の板に白く太い字で書かれた「地蔵堂」の額が掛かっている。 軒先にぶら下がる鈴は、まるで船出を知らせるドラのように、平べったい形だ。
 お堂の前に「市指定有形文化財(彫刻) 銅像 地蔵菩薩坐像」と書かれた説明板が立っていて、 正徳3年(1713年)江戸小舟川の井田八左衛門という人が造ったもの、と記されていた。 その文化財がこの堂内に納められているのだろう。格子戸のほんのわずかな透き間からのぞいて見ると、 ピカピカ光る銅造りの地蔵像が、蓮台の上に座っていた。
  「永く甲州道中日野宿の西の出入り口に鎮座して、ここを通行する旅人を見守り、 彼らからは『坂下地蔵サマ』と親しみ敬われた」と、説明板に書いてある。 江戸時代から300年近く、日野宿西端の守り神だったようだ。
 お堂の真後ろにある日野駅のホームからは、ひっきりなしに中央線の電車が発車している。 今、地蔵堂はその電車の安全を見守っている守り神のように思えた。

(2007年7月掲載)   地図


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