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多摩モノレールの砂川七番駅を降りて、芋窪街道、平成新道を歩くこと15分余り、こんもりした森が見えて来た。近づくとその下に、かやぶきの大きな屋根。ここが、江戸時代へタイムスリップした場所であることをしのばせてくれる。入り口の手前右に建つ、管理事務所の建物も、白壁の土蔵風だ。
門をくぐると、中庭を隔てて正面に、その古民家がどっしりと構えていた。雨戸はすべて開け放たれているものの、縁側の敷居が高そうで、ちょっと近寄り難い感じだ。張り替えたばかりなのだろうか、障子の紙の白さが、目を引いた。
古民家は、江戸時代以来現在地の近くにあった小林家の住宅を、平成5年10月に移築、復元したものだそうで、市の有形文化財に指定されている。民家の玄関前に立つ説明板によると、住宅は六つの部屋から出来ている「六間型」。母屋北西に配置された「オク」の間の作りは当時の武家住宅の様式に匹敵するもので、欄間や建具などの構造や意匠にも高い技術が使われているとのこと。家の中には囲炉裏もあって、鉄瓶でお湯が沸かされ、お茶を楽しむ人たちの姿が見られた。
民家の横手に回ってみた。そこには、小規模ながら、竹林があり、陸稲と思われる穂がたわわに実っていた。遠い昔の農家の生活を思わせるような、たたずまいだった。
(2006年10月号掲載) 地図
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