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多摩モノレール柴崎体育館駅を降りて1分ほど歩くと、緑と清流豊かな公園に入った。流れに沿って、右手の上流へと進む。幅2〜4メートルほどの浅い流れの中には小魚が群れをなして泳ぎ回り、時折水面に銀色の体をひらめかせて飛び上がる。ピチピチした動きはまるで若アユのようだ。
車道の下をトンネルや橋でくぐり、上流へとさかのぼると、そこは残堀川の土手の下。小さな池の中には、まるで火山の噴火口のように突き出た湧水口があった。井戸のようにポッカリと開いたその口からは、透明な水がゴボゴボと勢いよく噴き出していた。水は高度処理した下水なのだそうだ。
湧水口で折り返して、来た時とは反対側の岸を歩くと、俳人中村草田男の句碑
冬の水一枝の影も欺かず
が立っていた。昭和18年、普済寺であった吟行会で根川を詠んだ句で、川面に木の枝のすみずみまでがくっきりと映っている様子を詠ったものという。
流れをたどって行くと、子供たちの歓声があちこちで響き、お弁当を広げる家族連れ、鴨に餌をやる人などがいて、市民に親しまれていることが、とてもよくわかる。
全長約1・36キロの終点は、「貝殻坂橋」。その昔、ハマグリの貝殻がたくさん出たことから名づけられた坂にちなむつり橋だそうだ。
橋をくぐった流れは、静かにその先の多摩川目指して進んで行った。
(05年7月掲載) 地図
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