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町田市成瀬と横浜市青葉区の県境に成瀬尾根と呼ばれる小さな里山がある。1980年後半、宅地造成計画が持ち上がった中、この地に暮らす女性たちが「成瀬の自然を守る会」を立ち上げ、緑地保全の署名運動を行い、行政や地権者と幾度とない折衝を重ね、やっと守った貴重な自然である。
ようやく秋らしくなってきた日の午後、こどもの国駅から歩いてみた。
尾根道
駅を出てスーパー三和を通り過ぎ、広いなだらかな坂をゆっくり上っていくこと約10分、道路の両脇に階段が出てくる。左の階段を上りきると舗装された尾根道で、右側は住宅地だ。
しばらく進むと、住宅の間から成瀬台の町の向こうに丹沢の山が見えてくる。ゆるやかに曲がる道のまわりには色づき始めた柿や栗林の大きなイガ栗もあり、秋を感じる。
足元が土になった。ここから先が成瀬尾根道。「成瀬の自然を守る会」の案内板がある。道が狭くなり両側が樹木や草に覆われ、マムシ注意の看板も。にわかに里山の尾根道歩きらしくなってきた。木の根、粘土質の土は滑りやすいので気をつけて歩く。鳥のさえずりも聞こえる。クヌギ、ミズキ、コナラ。樹木の名札を読みながら歩く。
大きな送電鉄塔が現れた。高さ60m。そのまわりには野草園、風の広場。左右に畑が段々に広がっている。谷戸の風景が何ともいい感じだ。トンボがたくさん飛んでいる。
再び住宅地に出ると間もなく西側全体が開けた。成瀬山吹緑地だ。昨年12月号でも紹介したが、視界いっぱいに空が広がり、遠くの町まできれいに見えるこの景色は、やはり素晴らしい。晴れていれば箱根から秩父の山々まで見渡すことができる。特に、これからの季節は望遠鏡を使うと日本で2番目に高い南アルプスの北岳も見えることもあるという。
「成瀬地域に唯一残された尾根緑地の動植物が安心して生きていけるこの貴重な環境を、みんなで大切にしていきましょう」と看板にある通り、今も尾根道整備の活動を継続して行っている会の方々に感謝をしながら、東雲寺へ下りていった。ゆっくり歩いて約1時間、季節を感じる楽しい散策となった。
(左) 山岳展望図がある成瀬山吹緑地 (右) 地図 点線が散策路
(2019年11月掲載)
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