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多摩平の森入口の門(石でできていて茶色)
豊田駅北口から昨年開業したイオンモールを過ぎ、多摩平交番前を右折してしばらく進んでいくと、右手に広い空き地が広がっている。ここは都市再生機構(UR)の管理する区域で、除草用に7頭ほどのヤギが放し飼いにされている。1万平方メートルもあるという敷地には青々と草が茂っており、ヤギたちは除草の任務を与えられているというわけだ。さっそく敷地内を覗いてみると、まだ気温が高いためか、ヤギたちは固まってお昼寝中の様子。中にはカメラを持って覗き込んでいる人間が珍しいのか、不思議そうな表情でこちらを凝視するヤギも見られた。
団地内の除草がヤギのお仕事です
ヤギに別れを告げ、少し進むと、左手には団地内緑地・多摩平の森が広がっている。この地は大正末期に宮内省の御料林として造林された場所であり、昭和30年代の住宅公団によるニュータウン開発でも森は大切に保存された。1997年(平成9年)の多摩平団地の建て替え後は、親しみやすい森への再生を図り、現在緑地内に約350本、20種を超える高木があるそうだ。
森は4つのゾーンに分かれており、南側からアカマツの林「マツボックリの森」、モミの林「ストーンの森」、草の広場がある「遊びの森」、四季折々の表情が楽しめる「四季の森」となっている。
木製のゲートをくぐり、中へ入ってみると、高さ数十メートルにおよぶ木々の中をくねくねと散策路が伸びており、森の息吹を体感することができる。
「ストーンの森」の入口近くには鉛筆形のオブジェがあり、この名の由来が8枚の絵と文で記されていた。この「ストーン」とは、カナダ人宣教師・ストーン牧師のことであり、昭和20年代、彼は故郷・カナダを彷彿とさせる樹木の佇まいに惹かれ、ここ多摩平に伝道の拠点「中央農村教化研究所」を構えたそうだ。その後、函館での説教の帰りに洞爺丸事故に遭い、彼は自分の救命胴衣をまだ着けていない青年に譲り渡し、亡くなったのだという。
この「ストーンの森」には、樹齢60年以上にもおよぶモミが高々と伸びており、その姿には圧倒的な存在感がある。木々の間を縫うように伸びる散策路もいい雰囲気だ。なお、これだけの規模のモミ林は、関東でも貴重なものだとか。傍らの団地内にも緑が多く、雨水を利用した小川や手入れのされた植栽などがあり、「公園内に団地が建っている」ようであった。
(2015年10月掲載) 地図
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