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京王線平山城址公園駅から、北野街道沿いに歩いて約8分、「真言宗智山派 徳善院」の看板が見えてきた。 街道に面した門を入ると、左手に古い6体の石仏が並んでおり、その先には比較的新しくて大きい石像が立っている。
台座に「水子・子育 やすらぎ地蔵菩薩」という字が彫られたその地蔵さんは、右手にしゃく杖を握り、 左手には赤子を抱えている。その足元にも一人ずつ、赤ちゃんがまるで甘えるように、すがり付いた像だ。 慈悲深い表情は、この世に生を得なかった命を慰め、あるいは親の代わりになって、 子どもたちを慈しみ育てる姿に見えた。
奥にたたずむ本堂の、右手前に立つ銅像は見慣れた弘法大師のようだ。像の前に立て札があり、 「お砂ぶみ石」と書かれている。「弘法大師四国八十八ケ所霊場のお砂が収めてあります。 南無大師遍照金剛と唱えてお参り下さい」とあった。銅像の足元に、 四国の地図が彫り込まれた石の板が埋め込まれている。地図には数字が書かれており、 四国八十八ケ所の霊場の位置を示しているようだ。霊場の砂をこの石版の下にでも収め、 この石版を踏むことによって、八十八ケ所を巡ったと同じご利益を受けられるのかも知れないと思った。
帰りがけ、振り返って見ると、どんよりした梅雨空の下、今しがた降った雨を受けて本堂の屋根は銀色に輝いていた。
(2007年8月掲載) 地図
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