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高尾山ケーブルカー終点の高尾山駅を出て、新緑の木々に覆われた中しばらく行くと、道が二手に分かれる。 右手がなだらかな「女坂」、左手が急な石段のある「男坂」だ。
左手の急な石段を息を切らせ、途中何回か休みながら登り詰めると、茶店がある。 その茶店の手前、右に曲がって登る坂道の入り口に、「仏舎利奉安塔」と書かれた立て札。 ゆるやかな坂を行くと、小高い丘の上に出た。そこにそびえていたのは、高さ10メートル近い白亜の尖塔だった。 その塔の裏側に回ると、さまざまな記念碑や石碑が建てられていた。
なかでも目に付くのは「硫黄島戦没者 慰霊碑」と彫られた灰緑色の石碑だ。 C・イーストウッド監督の映画で有名になった、あの硫黄島の戦没者が、ここに祭られているのだ。 慰霊碑の左手前には、「永代供養」と彫られた黒い石碑。下に小さめに「厚生大臣 小泉純一郎書」とあった。 小泉前首相が厚生相時代の、平成9年に建立されたものらしい。
慰霊碑の右手前に、建立の経緯を記した石碑があった。それによると概略、 凄惨を極めた戦闘で奇跡的に生還した機関銃中隊長が、戦没者の供養と平和を祈念するため、 高尾山薬王院の好意により建立の願いを遂げたとのこと。硫黄島へ行くことが困難である事情から、 ここに詣でてはるかに南の空を仰げば、現地で供養したのと同じ気持ちになれるだろうと書かれていた。
慰霊碑の前に咲く石楠花の淡いピンクが、兵士たちの霊を慰めるように鮮やかだった。
(2007年6月掲載) 地図
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