しごと日記Q&A編

  梅雨本番。雨の配達でのエピソードとかありますか?
(2020年7月号掲載)

  このコーナー、毎月の締め切りが近づいてくると慌てて書き始めています。その際に『枕』というか、文章の冒頭をどう書きだそうかなあなどと考えながら、本やインターネットで『季語』を確認することもあります。今回、7月(夏)の季語を調べたら、いかにも夏らしい言葉が並ぶ中で変わったものもあって、例えば、鮨、焼酎、甘酒なども夏の季語だとか。皆さんも調べてみるとけっこう面白い発見があるかもしれません。

  とはいえ、やはりこの時期は雨の季節。あと半月ほどすると、まぶしい太陽の季節もやってくるのでしょうが、今回は、ある意味、湿気(しけ)た、雨の話をしたいと思います。

  先日、雨中の配達を終えて戻ってきたベテランスタッフが、
「そういえば、最近は『早いもん勝ち』とか『遅いもん勝ち』って言葉を使わなくなりましたよねえ」と店長と話していました。新人君は、きょとんとした顔。初めて耳にする言葉のようです。

  かつてはASAで1台きりの新聞用のビニールラッピングマシンの性能が低く、雨天時のラッピングに途方もない時間がかかっていました。機械が空くのをのんきに待っているわけにもいかないので、雨雲とにらめっこしながら、どうしても雨が入り込むような郵便ポストのお宅の分だけ、最小限の数をラッピングして出発しました。それ以外のお宅はポストの裏側から濡れないように入れたり、玄関先まで届けたり、現地で携帯用ビニール袋に手作業で新聞を封入したりと暗闇の中、バイクのライトや街灯の明かりだけを頼りに作業したものです。

 当然、配達に出発するタイミングも重要になってきます。雨が降りだしそうな中、早く準備を済ませて、雨が本降りになる前に配達を終わらせて戻ることができたら、配達を早く終わらせた者の勝ちという意味で『早いもん勝ち』。
  逆に、土砂降りの中、ずぶ濡れになりながら配達する同僚を横目に、お客様をお待たせしないぎりぎりの時間までASAにとどまって、いくらか小降りになってから配達に取りかかって戻れたら『遅いもん勝ち』です。

  現在は、雨用ラッピングマシンの性能が良くなり台数も増えたので、そういう言葉を使う機会も減ってきました。それでも、天気やお客様宅のポストの状況など、プロの感覚をとぎ澄ましてほしいなと、先輩スタッフは新人君に期待しているのです。

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