小さな散歩道

烏山寺町の高源院 (世田谷区北烏山4丁目)

 
(左) 高源院正面。寺町通りの一番奥にある  (右) 境内はきれいに整えられ、落ち着いた雰囲気


コウホネの葉が生い茂った弁天池


黄色い花がちらほら咲き始めたスイレン科のコウホネ

庭で栽培されていたハスは間もなく開花

 世田谷区の北西部、京王線・千歳烏山駅から旧甲州街道を横切り、烏山交差点を過ぎると「寺町通り」が始まる。駅から寺町通りの入口までは約10分。おしゃれな外観の烏山北小学校前を通り、更にそのまま道なりに進むと中央高速道の高架下に出る。ここから先が寺町通り本番で、街の案内板も設置されている。

  住宅街の中を通るような普通の道の両側に、寺院がズラッと並んでいる。寺院が多い地域は都内の他にもあるだろうが、こんなに隣接して続くのは珍しい。通りに面していない寺院も含め、この烏山寺町には26の寺院があるという。「世田谷区の小京都」と呼ばれる所以だ。寺町の形成は、1923年の関東大震災や都心部の都市整備などの事情で、浅草、築地、本所、荒川などから移転してきた寺院が集まったのが始まりとか。

  近代和風建築の世田谷区指定有形文化財の客殿がある妙壽寺、浮世絵師・喜多川歌麿の墓がある専光寺などの先、寺町通りの一番奥に今回の目的地、高源院がある。案内板のある高速の高架下からは、ゆっくり歩いても10分ぐらいだ。
  臨済宗大徳寺派の瑞泉山高源院の創建は江戸・元禄年間の1703年。かつては品川にあったが、関東大震災を経て1939年に移転してきた。寺院の建立の際、境内に泉水を掘ったところ水源を掘り当て、それがやがて豊かな水をたたえる池となった。これが現在敷地内にある弁天池だ。池の水源は約2km離れた井の頭池と地下でつながっているため、井の頭池が増水すれば弁天池も増水し、減水の時は同じく減水するという。

  池の中央に弁天堂があり、岸との間は赤い欄干の橋でつながっている。秋にはコガモ、カルガモ、マガモなどが越冬のため飛来する。1984年「烏山の鴨池」として「せたがや百景」に選定された。
  弁天池には、黄色い花を咲かせる水生植物のコウホネ(スイレン科)やスイレンなどが生育し、コウホネはちょうど咲き始めたところだった。今年はスイレンの生育が芳しくないようだが、コウホネの花期は6月から9月だそうで、夏の間中訪れるひとを楽しませてくれるという。

(2017年7月掲載)  地図


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