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青梅線西立川駅を降りて昭和記念公園に続く高架橋を渡ると、すぐ右手に赤茶色の石碑が立っている。卵をスパンと斜めに切ったような形をしたこの碑こそ、あのユーミンこと松任谷(荒井)由実さんの「雨のステイション」の歌碑なのだ。
松任谷さんは八王子出身だから、西立川に歌碑があっても不思議ではないな、と思いながら、足元に埋め込まれた金属板の文字を読んだ。今では昭和記念公園の玄関口として多くの人が利用しているが、かつては米軍基地前のさみしい駅だった西立川。「雨のステイション」は、松任谷さんが当時の駅をモデルに、始発電車を待つ自分自身の心情をつづったものという。歌碑は駅舎の改築を記念して、その原風景の記憶を残そうとの願いを込め、平成14年に制作されたものだそうだ。
雨といってもザアザア振る雨ではなくて、霧雨というかシトシト雨のこと。信号の色が変わるたびに、深い霧に映えて、街じゅうの色が変わってしまうという松任谷さんの描写は、いかにも人っ子一人いない寂しい夜明け前の町の姿を表わしているのではないだろうか。歌詞には「六月は蒼く煙って」とあるから、梅雨の頃だろう。
訪れた日は、「雨の」ならぬ、春の光がふりそそぐ陽気。満開を過ぎた桜の名残を惜しむかのように、家族連れや子ども連れが、昭和記念公園の中へと、足を運んでいた。
(2007年5月号掲載) 地図
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