小さな散歩道

阿弥陀寺(あみだでら) (昭島市宮沢町2丁目)

  訪れたのは、梅雨の真っただ中。時折強く降る雨の中、青梅線中神駅から中神停車場通り、奥多摩街道を歩いて山門にたどり着いた頃は、衣類はびしょびしょに近かった。
  門の手前左に立つ掲示板に「平凡に生きていられる事は既に平凡ではないのです」とあった。なるほど、確かにこの複雑で時には物騒な世の中、そう言えそうだ。刺激と変化ばかり求めるより、平凡に徹することの方がずっと並大抵ではない、ということだろうか。


  そう考えながら本堂前に進む。銅板ぶきの屋根は、雨水にぬれていぶし銀のような光を放っている。本堂の手前右側に白い立て札があり、「かんかん石」と書かれていた。その下には茶色がかった1メートル足らずの石碑。立て札に「慶長5年(1600)に没した宮沢村領主鎌田孫左衛門の墓碑。自然石で造られたその墓石は、たたくと『かんかん』と金属音を発するため古くからこの名がある」と記されていた。石碑をよく見ると、「清久浄安居士」とも読める文字。右下に「鎌田孫左衛門」の字もある。たたくのは遠慮した。
  本堂の左側に木の板が掛かっており、「関東八十八カ所霊場第七十一番」と彫られていた。手前には観世音菩薩像や、弘法大師と思われる像。境内を見回すと、右手奥にこじんまりしたお堂がある。近づくと「薬師堂」という額が掛かっている。後方に茂る樹木とあいまって、寺院全体が一幅の墨絵のように見えた。

(06年8月掲載)  地図


小さな散歩道 目次へ 前へ 次へ