しごと日記
朝刊の話 [1] (2005年3月号掲載)
当ASAではたくさんの新聞や雑誌・出版物を配達しています。
一般紙が、朝日新聞、日本経済新聞、東京新聞。ニッカン、デイリー、トーチュウなどのスポーツ新聞や、
ヘラルド朝日、ジャパンタイムズ、ニューヨークタイムズなどの英字紙、お子様向けの小学生新聞、
将棋や囲碁などの趣味の新聞、自動車や電波などの専門的な新聞など、日刊・週刊・月刊合わせて2005年3月1日現在、38種類あります。
午前2時半から3時にかけて各社のトラックが新聞を積んで販売店に到着するので、従業員も午前2時半に出勤してきます。
最初の仕事がトラックからの新聞の荷降ろしです。
皆様の中には、発売前の本や雑誌がビニールで包まれた固まり(梱包)の状態で
書店やコンビニの床に置かれているのをご覧になった方もあるかと思います。
印刷工場から配送されてくる新聞も、まさにその状態で販売店に届きます。60〜100部ずつ
ビニールに包まれた固まりが、合計100個近く販売店に積み上げられるのです。
荷降ろしが終わると、ベテラン社員が各配達エリアごとに新聞を分けていきます。
朝日新聞は5,700部以上ありますが、配達中の破損などの差し替え用としての予備は10部程度しかないので、
正確に手早く分けられます。
配達員が各自配達に必要な梱包を開封し、取り出した新聞に折込広告を挟みこみます。
折込広告が入るのは朝日・日経・東京の一般紙3紙だけです。はみ出しがないようにきれいにそろえ直すと、
お届けする「新聞」の出来上がりです。
ちなみに、この「新聞」、1人の配達分を積み上げると、高さ3m以上になります。
朝刊の話 [2] (2005年4月号掲載)
各自バイクに新聞を積み終え、ほぼ準備が終わるのが午前3時半頃です。
出発前にもう一度、お留守やお引越で配達件数の変更がないかをチェックします。新聞の部数は、
各エリアの担当者が細かく管理していて、ちょうど配達件数分しかバイクには積まないのです。
予備はないので、配達が終わるときれいに新聞もなくなる仕組みです。お届け忘れがあれば新聞が余るので、
どのお宅に届けていないかを探し回りますし、間違って配ってしまうと新聞が足りなくなるので、これまた探し回る羽目になります。
そういったことがないように、出発前の部数や配達先の変更のチェックには細心の注意を払います。
特に、スポーツ紙や英字紙など一般紙以外の新聞は、販売店にも予備が一部もありません。
朝刊の配達中、たまに千鳥足のお父さん(午前様)に「新聞一部売ってくれよ(主にスポーツ紙)」
なんて声を掛けられることがありますが、丁重にお断りしています。スポーツ紙を酔っ払いのお父さんに売ってしまうと、
本来配達されるべきお客様の分がなくなってしまうのです。
こうして配達前の準備が終わると、さあ出発です。新聞を積んだバイクが西へ東へといっせいに駆け出して行きます。
配達員が出発した後の店内には、留守番がひとりだけ残ります。嵐が過ぎた後のような雰囲気で、一時的な静寂に包まれます。
朝刊の話 [3] (2005年5月号掲載)
各配達員が自分の担当エリアの一軒目に着いたら配達の開始です。
配達の際は、「順路帳」といういわば新聞屋さんの虎の巻を見ながら配ります。
B5サイズを縦に半分に切った手帳(ちょうど大福帳のような形)で、これで何百軒というお宅に間違いなく新聞を
配ることができるものです。実はこの中には、何丁目何番地といったいわゆる「住所」は一切書かれていません。
読者名と購読紙の銘柄、それと読者宅を表現する順路記号というものが書いてあって、
配達員は番地ではなくこの順路記号を読み解きながら配達先を辿っているのです。
記号には、隣り、一軒おいて隣り、向い、はす向い、突き当たり、右3軒目、左路地入らず直進・・・などなど、
およそ20種類ほどあります。この順路帳の記号に従って進んでいけば、次の配達先に行き当たるという仕組みです。
当然、間違った記号に従っていけば、とんでもないところに行き着いてしまいますし、引越しや留守止めなどによる
配達先の変更が常に更新されていなければ、正確な配達もできなくなってしまいます。
各エリアの担当者は、毎日配達するうちに自然と暗記していきますが、担当者の休みの日に代わりに配る配達員や、
新人はこの順路帳が欠かせません。担当者も、引越しなどでお客様の入れ替わりが激しい時期や、長期の留守止めが増える
時期には順路帳を見ながら配達しています。
入社して最初に習うのも、この順路記号の読み方で、まさしく新聞屋さんの基礎です。
この記号、全国共通ですから、これさえ知っていればどこに行っても新聞配達ができます。
ちなみに、この順路帳に従って配達していくと、ちょうどエリアの中をほぼ一筆書きに近い形で
一周できるようになっています。袋小路や狭い路地以外は、できるだけ同じお宅の周りを何度もバイクで通らないように作ってあるのです。
朝刊の話 [4] (2005年7月号掲載)
今回で、朝刊の話も最終回です。
配達員たちは、毎日約400軒のお宅に新聞を配達しています。 以前にも紹介しましたが、積み上げると高さ3メートルにもなる新聞の山は、 一度にバイクに積めるような量ではありません。 曜日や天候によっても違いますが、一度に積めるのは大体150部前後です。 最初に、150部程度の新聞をバイクに積み、配達に出ます。配り終わったら店に戻り、 置いてあった150部を再度積みます。こういった作業を2〜3回繰り返しながら配達をしています。
最初に積んだ新聞を配ることを1回戦、2回目を2回戦と言っています。 一年でいちばん新聞が厚くなるのは、1月1日、元旦の朝刊です。このときは一度に50〜60部しか バイクに積めず、5〜6回戦になってしまいます。
早起きの奥様、ご主人様の中には、すぐ隣りまで近づいて来た新聞屋さんのバイクの音が 自分の家の前でUターンして遠ざかっていった……。「今日はうちに配達するのを忘れたかな?」 と思っていると、しばらくしてからポストに新聞が届く音が聞こえ、「あれ?届け忘れじゃなかったんだ」 と思われたこともあるのでは……。そんな時は、バイクに積んだ配達用の新聞がなくなり、 2回戦目を補充しに店に帰っているのです。
ただし、販売店から遠いエリアは、一度新聞を積みに店に戻ると、それだけで20〜30分は時間が掛かります。 朝、皆さんをお待たせせずにこういった配達をするのは無理といっても過言ではありません。 そのため、販売店から遠いエリアを担当している配達員のために「転送」というものがあります。
転送する各エリアには、あらかじめ決められた中継ポイントがあって、そこに店に残った2,3回戦目の 新聞の梱包を車で届けるのです。そうすると、中継ポイントで2、3回戦目の新聞をバイクに積むことができ、 店まで戻った場合に生じる1回20〜30分の移動時間のロスを短縮できます。
中継ポイントは、屋根があって雨が降っても新聞が濡れない商店やアパートなどの軒下を、 大家さんや管理人さんの許可を得た上で使わせてもらっています。早朝、犬の散歩などの途中で、 アパートの軒下に置いてある新聞の梱包を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。 その新聞をすべて配り終えると朝刊の配達の終了です。
最近では、日の出が早くなり、お客様をお待たせしていないか配達員もドキドキしながら配達しています。 中には、朝早くからポストの前で新聞を待っているお客様もいらっしゃいます。
――「おはようございます!」 一日の始まりです。
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