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社殿
高幡不動駅の北口を出ると、目の前には高い木々が伸びる一角があった。こちらが若宮愛宕神社だが、これほど駅前にある神社というのも珍しい。若宮愛宕神社の創建年代は不詳だが、この神社には面白い言い伝えが残されている。
その昔、高幡不動尊の二童子像を彫った旅の僧がいた。その見事な出来栄えに村人たちは大変驚いたという。僧が村を去る際には皆で見送ったが、この地まで来ると、僧は突然姿を消してしまったという。村人は「旅の僧は仏の化身である」と考えて、この地を「別旅(わかたび)」と名づけ、ここに社を建てたということだ。なお、別旅はこのあたりの小字名であり、神社の少し北東には別旅公園という小公園もある。
境内に入ると、参道の左手ではイチョウが高く伸びていて、足元にはギンナンがたくさん落ちていた。その近くには、しめ縄を巻いた大きな石が置かれている。何キロあるのか想像もできないほど重そうな石であるが、大変神聖な石なのだろう。
参道先に建てられている社殿は再建されたもののようだが、朱色を基調とした社殿は、境内の緑とのコントラストがなかなか美しい。また、屋根の側面をよく見ると、なぜかハートが描かれていた。社殿右手からは大きなコブをつけたご神木が伸び、社殿前の階段には、しっかりとお酒がお供えされていた。
社殿の左手には、境内社の小野稲荷大明神がある。小さな境内社だが、側面には神社の由来も掲示されており、祠の中には多くのキツネが祀られていた。
駅前にある神社だが、駅に通じる神社前の道を通る人もあまり多くはないようだ。境内は静かで落ち着いた雰囲気に包まれており、なかなか居心地のいい一角となっていた。
神社近くの小学校を抜けると、緑豊かな遊歩道「向島用水親水路」が伸びている。親水路にはベンチのある水車小屋や親水スポットなどが整備されており、快適に散策を楽しむことができる。
この日、小学校の裏手に造られたビオトープでは、多くのカモたちが羽を休めており、その様子を子どもたちがなごやかに眺めていた。
(2025年12月掲載) 地図
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