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多摩モノレールの程久保駅を高幡不動側に降りると、目の前に色鮮やかな壁画が飛び込んでくる。これは壁への落書きや張り紙などを防ぐことを目的に「官(東京都・日野市)・学(武蔵野美術大学)・産(多摩都市モノレール・大日本塗料など)」が一体となって行われたプロジェクトで、壁画は2004年に武蔵野美術大学の学生によって描かれたものだ。
上部を京王動物園線が走る高さ約8メートルほどの高い壁には、白く塗装した壁に6つの長方形状のモチーフがあり、その中は色鉛筆を並べたように赤、青、黄色、オレンジとカラフルな横線で彩られていて、モチーフには青い影が描かれている。メキシコのラグマットをふわりと広げたようにも見える。
近くの看板によると、この絵のテーマは「道・距離・未来」なのだそうだ。横に走る直線が「道」や「未来」を表しているのだろうか。いやモチーフの浮遊感がそれを表しているのだろうか。この280平方メートルにも及ぶ壁画には、落書き・貼り紙防止用のクリヤー塗布材が塗られているとのこと。その効果もあってか、完成から10年以上経った現在もきれいな姿を保っている。
高幡不動駅と多摩動物公園駅に挟まれた、乗降客の少ない静かな駅ではあるが、この存在感ある壁画は、周辺住民のシンボル的な存在なのだろう。
かつてこの斜面の崩壊を防ぐために設計・構築された擁壁には、落書きや張り紙が多く、周辺地域の景観を損ねていたとは想像もつかない。
駅の傍らには程久保川が流れており、川岸は散策路として整備されている。川に向かうと「たばこや橋」という珍しい名前の橋があった。かつてはこの辺りにタバコ屋さんがあったのだろうか。辺りには自然や古い民家も残っており、なかなか風情のある一帯だ。
ここから下流に向かい「下程久保橋」を過ぎると、川岸にベンチが設置されていた。芝生の上にはまだ雪も残っていたが、上流から照りつける陽の光が心地よい。川面を覗き込んでみると、4羽ほどの鴨が泳いでおり、その周りを小さなキセキレイが跳ね回っていた。川には小さな中洲があり、こちらで羽を休める鴨の姿もあった。カワセミなども見ることができるそうだ。また近くには川面に下りられる階段があり、小さな親水場も設けられている。
さらに下流に進むと「境橋」が見えてきた。この橋上から下流部を見ると、モノレールが川の上をカーブを描きながら横切っており、視界も開け、開放感に溢れた景色を見ることができる。
(2016年2月掲載) 地図
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