しごと日記 Q&A編
その1 ご質問の通り、トラックで運ばれてきた新聞が販売店に届いたら、すぐに配達に出られる……とういうわけではありません。
まずは全員でトラックからの新聞の荷降ろしです。各社ごとに別々のトラックで新聞が届くので、トラックが到着するたびに、この作業の繰り返しです。店内には60〜100部ずつビニールに包まれた新聞の固まりが100個近く積み上げられます。
荷降ろしが終わると、ベテラン社員が各配達エリアごとに新聞を分けます。各自が配達に必要なこん包を開封し、取り出した新聞に折り込みチラシを挟み込んでいきます。ちなみに、折り込みチラシが入るのは、朝日・日経・東京・毎日・産経などの一般紙だけですが、各銘柄ごとに折り込むチラシの種類が違います。また、正確に、はみ出しが無いよう、スピーディーに1人350部以上の新聞にチラシを折り込むには、どうしても「慣れ」が必要です。
新入社員とベテラン社員では、この作業だけで約30分以上の差が出てしまいます。これでは、配達に慣れていない新入社員は、出発するのも配達が終了するのも遅くなってしまいます。ただ、戦場と化す朝刊業務時に折り込み作業を教えるなんて悠長なことはできないので、昼間の時間帯に集中特訓をします。
特訓の様子を実況すると、こんな感じです。
「サッ、サッ」と手際よく見本を示すY先輩。「ほー、すげー速さ」と新人のM君。「感心していないで、さっそくやってみろ」とY先輩に言われてやってみるが、どっちの手で何をしたらいいか、サッパリわからなくなってしまうM君……。
果たして、この「集中特訓」は、いつまで続くのでしょうか?
次号で、引き続き特訓の様子を紹介します。
その2 前号では、朝刊が販売店に届いた後、各自が配達に必要なこん包を開封し、取り出した新聞に折り込みチラシを挟み込んでいく作業を紹介しました。
昼間の時間帯に、Y先輩の指導で作業の「集中特訓」を受け始めた新人のM君の様子を実況します。
作業台の前に立ち、Y先輩を見ながら同じようにやってみる新人のM君ですが、なかなか思うように手が動きません。
Y 「けっこう不器用だな」
M 「おかしいな。書道をやっていたから指先は器用な方なんですけど」
Y 「書道と折り込み作業とは、あまり関係ないんじゃないか?」
M 「そんなことありません・・・」
Y 「チラシは右、新聞は左に置いて、左親指で開いたスキマにチラシを滑らせながら差し込んでいくんだ」
M 「意外と簡単そうなのになあ」
M君の、のんきな声に、いつも笑顔のY先輩のメガネが「ギラリ」と光ったように見えたのは気のせいでしょうか。
折り込み作業を始めたM君、1枚目のチラシはうまく入りました。しかし、2枚目で早くもつまずきます。
M 「あれぇ?」
左手の親指でうまく新聞を開くことができないのです。
Y 「違う、新聞の角を親指で押し出すようにするんだ」
M「はいっ、あれぇっ」
その時でした。「ビリィッ」という音が響いて、新聞が破れてしまったのです。
手取り足取り教えてもらっても上達しないM君は動作がむやみに大きく、1枚折り込むたびに腰が大きく上下するのです。その姿は、運動選手が下半身のトレーニングをしているみたいでした。
Y 「やっぱり、かなり不器用だな」
M 「おかしいなぁ、書道やっていたんだけどなぁ」
書道と折り込み作業とは、あまり関係がないことをM君が自ら証明してくれたようです。
その3 前号では、朝刊が販売店に届いた後、取り出した新聞に折り込みチラシを挟み込んでいく作業がうまくいかない不器用な新人のM君とベテランのY先輩による「集中特訓」の様子を紹介しました。
「書道をやっていたから指先は器用な方で、折り込み作業も大丈夫です」と言っているわりに不器用なM君も、特訓の成果が徐々に表れ始めました。
M君とY先輩のコンビを引き続き見てみましょう。
朝刊が販売店に届くと、各自が配達に必要なこん包を開封し、取り出した新聞に折り込みチラシを挟み込んでいきます。まずは、銘柄・地区ごとに分けられて棚に整理してあるチラシを作業台(高さ1m位)に向かって右側に積み、新聞を左側に積み上げます。
いよいよ朝刊出勤が始まったM君と並んで作業するY先輩。二人とも左手の親指と人差し指に「指サック」をはめて作業が始まりました。
Y 「これをしないと左手で新聞をめくる時に破けるからな」
M 「ふぁ〜〜」
Y 「あくびしてないで始めるぞ!」
M 「アイアイサー」
Y 「右手で抜き取るチラシを左手で開く新聞より少し高く積んで、できるだけ移動距離を短くするのがポイントだ」
M 「了解です。あれぇっ」
Y 「チラシを1部ずつ親指の腹で取ろうとするな。チラシの上に右の手のひら全体をたたきつけるように置いて、手前に引きながら少し出た部分を親指で取り、そのまま左手でめくった新聞の見開き部分にすべり込ませるんだ。出来上がった1軒分の新聞をさらに左に置いていく作業を素早く繰り返せ。両手を休ませないで動かし続けるんだ」
M 「サッ♪、パッ♪、サッ♪。だいぶ早くなってきたでしょう?」
Y 「もっと早くするんだ。そんなペースじゃ時間内に配達が終わらないぞ!」
M 「はいっ!」
100部分のチラシ入れ作業を10分で終え、自分の配達分すべてを30分で準備する「職人技」のY先輩と100部で15分かかるM君ですが、最初は20分以上かかっていたので日々確実に進歩してきています。
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